1;来年度回復も急増せず~東京地区の生コン
東京都心で生コンの需要不振が長期化している。都市再開発など10万m3規模の特大物件が目白押しで、東京オリンピック・パラリンピックという巨大イベントを4年後に控えているにもかかわらず、東京地区生コンクリート協同組合(東京都中央区、吉野友康理事長)の今年度出荷は300万m3を割り込み、過去最低を更新するのは確実となった。ゼネコンの受注手控えなどが響いたとされる。来年度は増加に転じる公算が大きいものの、五輪特需の規模が縮小していることもあって、今のところ需要が跳ね上がるような雰囲気はない。
受注手控え影響も
「昨年度は豊洲新市場工事があった反動で、今年度上期(4~9月)の出荷は前年実績を下回るのは避けられないと見ていたが、ここまで下振れるとは思わなかった」(吉野理事長)。上期出荷は前年同期に比べ25%減の129万3千m3と過去最低を更新。当初計画比では32万7千m3の下振れとなった。前年割れは10月まで14か月続いており、今年度に入りマイナス幅が一段と拡大している。
現場の人手不足が深刻化した2013年度以降、ゼネコンが受注を手控えた影響が顕在化したことに加えて、建設費用の高止まりで、デベロッパーがマンションの新規供給を手控えていること、RC造からS造への工法変更で生コン原単位が低下していることが「複合して予想以上の落ち込みになっている」と吉野理事長は指摘する。
新規引合が活発化
盆明け以降、新国立競技場を含め新規引合が活発化しており、300万m3台で推移していた契約残は9月に400万m3台に戻り、10月末時点で前年比3・6%増の442万m3となっている。近く40万m3を超えるとされる選手村の引合も寄せられるもよう。
ただ、回復の足取りは緩やかなものになるとみられている。昨年度下期の水準が低かったため、そう遠くない時期に連続減はストップしそうだが、これからの数か月で上期の減少分を取り戻すのは到底不可能。そのため、今年度の仕上がりは270万~280万m3と当初予想330万m3に遠く及ばす、10年度に記録した最低出荷310万m3を更新する。
来年度に盛期入り
17年度は五輪特需を背景に少なくとも300万m3の大台は確保できそう。18~19年度も堅調に推移する公算が大きい。とはいえ、「3年間でやれる工事は限られる」(同)ため、かつて思い描いていたほど需要が膨らむことはなさそう。ただ、骨材需給の逼迫や生コン運搬車の不足といった安定供給を脅かす懸念は今も残る。
五輪施設需要は当初100万m3と試算されていたが、現時点では70万m3前後と推定されている。製造設備の更新など特需への備えを進めてきた都心の生コン各社は肩透かしにあった格好だが、先送りされた計画も数多くあるため、「五輪後に急に落ち込むことは考えにくい」(同)と、底堅い需要は比較的長く続く見込みだ。