1;官民不振、原単位も低下~セメント
セメントの国内需要が低調だ。セメント協会が22日発表した2015年度上期(4~9月)の内需は前年同期に比べて6・5%減の2115万トン(見込み)だった。官需向けが6・3%減、民需向けが6・7%減とそろって不調だった。建設投資額に対するセメント原単位の低下も影響している。上期の減少分を下期で取り戻すのは難しいことから、今年度内需は従来予想4600万トンを大きく下振れるのは必至だ。業界内では前年実績に対し50万~150万トン減の4400万~4500万トンにとどまるとの厳しい見方も出ている。
上期の国内販売(輸入除く)は6・1%減の2098万3千トンだった。地区別では前年を上回ったのは東北、北陸、沖縄の3地区。東北は岩手を中心に復興工事が出ており、また、北陸は新幹線延伸工事がけん引した。沖縄は官民とも旺盛な建設投資が続いた。
一方、北海道、四国、九州は特需の終息や公共工事の減少が響き2ケタマイナスとなった。三大都市圏は民需が不振で、中でも近畿は1割近く落ち込んだ。
同協会は、補正を含めた公共事業予算が前年度より少ないこと、民間設備投資に力強さがないことを減少理由に挙げている。加えて、工事費の上昇、工法の変化などでセメント原単位も低下している。
下期の見通しについて藤末亮流通委員長は「昨年度下期のレベルが低かったので、前年比でプラスになる可能性がある」と述べた。しかし、増えたとしても上期の減少分を補うまでは至らず、年度トータルでは「4600万トンには届かない」(同)と指摘した。
ただ、中期的な内需見通しは総じて明るい。
同日開かれた同協会役員と記者との懇談会で関根福一社長は「オリンピックに向けた様々な工事が立ち上がってくる。被災地では鉄道、道路、河川といった公共インフラをはじめ数多くの復興事業が進められ、大都市圏では再開発工事が活発化する。リニア中央新幹線工事もあり国内需要は比較的堅調に推移すると見ている」と述べた。