1;千葉砂 枯渇の危機
首都圏の生コン工場で広く使用されている木更津や君津、富津などで採取される、いわゆる「千葉砂」が枯渇の危機に瀕している。千葉砂の生産業者が有望な資源として開発を望んでいた国有林の採取許可が下りず、民有地の確保も進んでいない。千葉砂生産業者も有望な資源を探索しているものの、現状と同等レベルの品質が保証できる原砂山は、簡単には見つからない。このままだと、現在地の採取が終われば、骨材が供給できなくなる恐れがある。千葉砂生産業者は一昨年からダンプや船舶の運賃改善を主な理由として値上げを行ってきたが、今後の値上げは、新たな資源を確保するために、「事業の存続を懸けて」行う構えだ。
千葉砂の年間生産量は1000万トン超で、首都圏の生コン工場ではコンクリート用細骨材として使用されている。千葉砂を使用する生コン工場は県外にも多く、生コン工組員のうち東京では92%、神奈川では57%、埼玉では17%(埼玉のみ2011年4月時点、東京と神奈川は今年度実績)の工場が使用している。仮に千葉砂の供給に支障が出てくれば、生コンにも大きな影響が出ることは必至だ。
現在採掘している資源の終掘を見据え、千葉砂生産業者は2000年代に入ってから同業他社と連携し、現在の採掘地に隣接する国有林の開発に向けて、環境アセスメントなどの手続きを進めてきた。この許認可権を持つ千葉県はこれまでに土石採取対策審議会を開催してきたが、現在に至るまで採取許可は出していない。また「現段階で審議会を開催する予定はない」(千葉県)という。
安定供給を維持するため、「(バブル期に購入した)最後の民有地に手を付ける」(千葉砂生産業者)ところも出てきた。ただ、その採掘地は現在より小規模になるケースがほとんどで、急場を凌ぐ策と言えそうだ。
昨今の値上げと需要回復によって、千葉砂生産業者の売上高は伸びているが、電力代や老朽化したプラントの修繕・消耗品の購入費はそれを上回るスピードで上昇しており、収益は好転していない。こうした中、現在と全く違う地域で山砂を採取しようとすれば、新たな採取地からの横持ち費用が発生することに加え、プラントの新設が必要になれば億単位の投資が必要だ。
採取地が変われば千葉砂の品質(物性)も変わる。千葉砂生産業者は生コンユーザーと協議しながら、新たな採取地から供給する砂に使用材料を変更するよう求める考えだが、高強度コンクリートなどの大臣認定品は材料が指定されているため、現在地からの供給も続けなければいけない。そうなると、現在地と新たな採取地を並行して操業しなければならず、運営経費も大幅に増える見通しだ。
足元では、首都圏の生コン出荷は減速しているものの、これから2020年の東京五輪に向けて需要環境は好転するとみられる。五輪需要が本格化した時に、「千葉砂の不足による骨材の玉切れ」が発生しかねない状況だ。千葉砂の資源確保に向けて、首都圏の生コン業界も千葉砂生産業者の活動を後押しする必要がありそうだ。
物流費を上乗せ
千葉砂生産業者は来年度に向けて製品価格をトン当たり100~200円、ダンプや船舶などの物流業者もトン当たり150~250円の値上げを求めている。特に東京湾内で千葉砂を輸送している船舶業者の姿勢は強硬だ。ピーク時(1990年)に128隻あったガット船は49隻に減っているうえ、このうち約8割の船齢は耐用年数とされる20年を超えている。老朽化した船舶が廃船されれば、現状の輸送体系を維持することも困難になるとみられるため、船舶の修繕・更新費用を求めている。