1:コンクリート強度管理を合理化~もの大で実験
建築基準法施行令のコンクリートの強度管理手法を見直そうという動きが出ている。現行ではコンクリートの型枠取り外しに関する規定や材齢28日の現場水中養生供試体は一定以上の強度を発現することが求められている。しかし、施工の合理化や高炉セメントやフライアッシュセメントの建築工事への用途拡大で現行制度で対応できないケースも出ている。そこで、今年度の国土交通省の建築基準整備促進事業(基整促)の一つに「コンクリートの強度管理の基準に関する研究」が盛り込まれ、現在、ものつくり大学(埼玉県行田市)で施工実験を行っている。 コンクリートの型枠の取り外しに関する規定は、第76条(型枠及び支柱の除去)や関連告示で定められ、セメントの種類、気温ごとに型枠設置期間が規定されている。また、試験体の圧縮試験などで5N/mm2以上の強度発現を確認する必要がある。今回の調査では型枠の残置日数や圧縮強度試験ではなく、積算温度を用いた強度推定手法を確立し、型枠取り外しに関する基準案の提案を目指している。同基準案が制定されることで積算温度のみで型枠の取り外しが可能となり、施工の合理化が図られることが期待されている。 一方、コンクリートへの要求性能の多様化に伴い、これまで建築工事で使用実績の少ない高炉セメントやフライアッシュセメントの活用が検討されている。都市の低炭素化の促進に関する法律(エコまち法)の選択的項目の一つに構造耐力上重要な部分に高炉セメントやフライアッシュセメントの使用を盛り込んでいるためだ。第74条(コンクリートの強度)と関連告示では現場水中養生を行った材齢28日の供試体の圧縮強度の平均値が設計基準強度の0・7倍以上と定められている。 普通ポルトランドセメントを使ったコンクリートは問題なくクリアするが、高炉セメントやフライアッシュセメントでは材齢28日で設計基準強度の0・7倍に達しないケースが多い。そこで、セメントの種類や養生期間中の周辺温度などに応じたコンクリートの材齢と設計基準強度に対する強度発現の状況を確認し、コンクリートが設計基準強度を発現することを担保するために必要な強度の確認に関する基準案を提案する。 現在行っている実験は模擬柱や模擬壁、模擬床の3部材を作製し、打設後2日と7日目にコア抜きを行うほか、28、56、91日の長期材齢を確認する。今月12日から27日にかけて4回に分けて13種類の生コンを打設した。さらに秋季(10月)と冬季(12月)に同様の実験を行い、季節ごとの違いを明示し、基準案を提案する。試験結果は今年度中にまとめ、建築基準法施行令改正のための資料とする。 基整促ではコンクリートの強度管理の基準以外に「指定建築材料ごとに国土交通大臣が指定する日本工業規格における高強度コンクリートの追加に関する検討」や「混合セメント等を使用したコンクリートの耐久性に関する検討」などを今年度のテーマとして採択している。 高強度コンクリートのJISに関する検討では現在認定が必要な高強度コンクリートのJIS原案の提案を行い、大臣認定品をJISと位置付けることで、手続きの負担を減らすための検討を目的としている。