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2013年10月17日号

1;六会事件から5年余り

生コン製造業界に激震が走った「六会コンクリート事件」から5年余りが経った。生コンの品質問題で生コン協同組合が補償対応を迫られた初めてのケースともなり、六会コンクリートが所属していた神奈川生コンクリート協同組合と湘南生コンクリート協同組合は、9月末時点で総額20億円を超える巨費を負担している。いまなお未解決案件を残しており、事件の完全終結までにあと数年かかるもようだ。

六会事件は2008年6月末に発覚した。同社が生コンを納入した物件でコンクリート表面が部分的に剥離する「ポップアウト」が起き、その原因が細骨材として不正混入した溶融スラグだった。

国土交通省がJIS不適合コンクリートの納入は建築基準法違反にあたるとして事件を公表したのを機に、一気に社会問題化し、生コン組合を巻き込んだ事態へと発展した。

同社は溶融スラグを1年近く不正混入していた。納入現場数は湘南協組で323件、神奈川協組で51件の374件に上ることが判明。同社は事件発覚後、早々に問題解決能力を失っていたことから、両協組が事後処理の前面に立った。

両協組は、大臣認定の事後申請で違反物件を適法化する作業に協力するとともに、09年12月にそれぞれ開いた臨時総会で、ゼネコンが負担する是正工事費などの実費に限定し、補償対応することを決めた。補償総枠は神奈川が15億円、湘南が12億円と設定、5年分割で支払うこととし、10年度からその原資となる特別賦課金の徴収を開始した。両協組はそれ以前に剰余金を取り崩し、それぞれ約3億円を調査費や補修費用などに充てている。

共販・保証は一体

生コン協組は、共販と品質保証は表裏一体と標榜してきたが、六会事件はそれを試す問題でもあった。

事件当時、神奈川県生コンクリート工業組合と神奈川協組の理事長を務めていた飯田康勝氏(横須賀地区生コン協同組合理事長)は、「協組が逃げるわけにいかない状況だった。品質保証を前提に、協組が納入工場を割決している。今回の問題で、仮に協組が(解散するなどして)補償を放棄していたならば、神奈川や湘南にとどまらず、協組共販という仕組みは壊れていただろう」と指摘する。

終結に2~3年

9月末時点の負担額は、大臣認定申請などの諸経費を含めて神奈川が10億円強、湘南が約11億円に上る。神奈川は、従来想定より出荷が上振れて特別賦課金が積み上がったことから、5年分割払いを繰り上げて、9月末に約2億3千万円(6件分)を一括で支払った。また、湘南は同月末に1件の和解が成立している。

現時点の未解決案件は、湘南10件、神奈川4件で、裁判中の案件もある。湘南は大半が地場建設の物件。協組が大臣認定申請をサポートし、適法化と是正工事を急ぐ方針だ。神奈川では2件について和解の方向で調整が進められており、近く大臣認定申請に漕ぎ着ける見通し。残り2件も調停に入っている。

深刻な法令違反が残した爪痕は深く、完全終結までにはなお2~3年かかる見通し。調停の行方にもよるが、最終的な負担額は、両協組とも臨時総会で決めた補償総枠内外まで膨らむ見通しとなっている。

再発防止を徹底

一方、品質問題やコンプライアンス違反の再発防止を徹底するため、両協組は品質管理会議を、神奈川工組は品質保証会議を10年秋にそれぞれ設置した。工場への強制立入検査など強い権限も持たせた。湘南協組では品質などのトラブル事例が、毎年20件くらい同会議に報告されている。「良いことも悪いことも水平展開」(同協組)して情報を共有、必要に応じて改善措置を実施している。

一連の取り組みにより一時強まったゼネコンからの工場指定要求は後退。同協組は「信頼は取り戻せた」とみる。両協組は六会事件に区切りがついた段階で、品質保証制度の整備に着手する。