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2019年03月07日号

1;非効率な慣習是正~東京の生コン

東京の生コン業界が非効率な慣習の是正に向けた取り組みを強化する。いっこうに改まらない納入予定キャンセルや残コン・戻りコンなどが安定供給を阻害し、経営にも暗い影を落としているためだ。東京生コンクリート協同組合連合会は来年度、残コン・戻りコン削減を目指し、大規模なキャンペーンを展開する。また、三多摩生コンクリート協同組合は情報システムを使って出荷予定を「見える化」し、キャンセルなどを抑制する。
東京の生コン需要は底堅く推移している。今年度の出荷数量は4~1月で前年比7・7%増の787万8千m3(非組合員は推定)となった。昨年度まで湾岸部に偏っていた需要が内陸の区部や多摩地域にも広がり、おおむね全域で増加している。通期の仕上がり見込みは960万m3前後と4年ぶりに900万m3を超える。
来年度はオリンピック特需がピークアウトするものの、再開発や物流倉庫、マンション、自動車道路などがけん引して堅調を持続する。東京地区生コンクリート協同組合は今年度見込みに比べ3%減の345万m3、東関東生コン協同組合は14%増の45万m3、三多摩協組は横ばいの93万m3と予想している。
都内全域で需給が引き締まってきたことで輸送力の不足感が強まっている。各協組は、安定供給を確保するため、各物件に対する納入工場を増やすなどの対策を講じている。その一方で納入予定キャンセルや残コン・戻りコンなどの根強い慣習がムダ・ロスを助長し、輸送や生産効率を下押しているという。
東京協組連のまとめによると、加入3協組の残コン・戻りコン発生量は月平均約1万2千m3と100戸のRC造マンションが毎月2棟建つ規模だ。最も多いのが東京地区で全体の8割近くを占める。各協組は契約取り消しの名目で戻りコンを有償化しているが、現場で少量荷卸し残コンとして持ち帰らせるなどの有償化逃れの行為や代金の請求を拒むという悪質なケースがいまだ散見されるという。
こうした状況を重く見た東京協組連は、「来年度から残コン・戻りコン削減キャンペーンを実施する。建設、生コン双方のコストアップにつながっていること、環境負荷低減が求められていることを強く訴えていく」(斎藤昇一会長)方針だ。各協組は有償化制度の強化も視野に入れる。
納入予定の変更やキャンセルも是正が進まず、生コン各社は頭を痛めている。東京地区の今年度の納入予定キャンセルは4~1月で161件(2万5千m3)と倍増した昨年度に迫る高い水準で推移している。このうち現場都合が7割、114件に上る。3日以内の納入予定変更は1685件(27万5千m3)に達し、昨年度の1791件(28万3千m3)を上回る勢いだ。
現場工程の乱れや遅延がキャンセル・変更の要因とされており、納入予定の精度向上を求めても容易に改まらないのが実情だ。こうした中、三多摩協組は新たな試みを始める。情報システムを使って出荷予定と実績、キャンセルを見える化し、その是正に活用する。来年度上半期中の運用開始を予定しており、ゆくゆくは生コンのネット予約システムに発展させる考え。
再値上げ機運高まる
一方、東京の生コン市況は、各協組による値上げがじわじわ浸透しており、この2年で区部や多摩地域の表示価格が2~6%引き上げられた。各協組は、輸送を中心にコストが一段と膨らんでいるとして、未達成分の獲得を急いでいる。
再値上げの機運も高まっている。すでに東関東が6月に800円値上げすることを表明した。東京地区や三多摩も来年度に販売価格を引き上げる可能性を示唆している。