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2018年12月20日号

1;特需は短工期、瞬発力がカギ~2018年の生コン

2018年の生コン需要は地域によって明暗がわかれた。今年度4~10月の全国の出荷量(非組合員は推定)は前年同期に比べ1・4%増の4963万m3となり、地区別では関東一区、北陸、東海、九州の4地区でプラスだった。4地区とも特需が出荷を押し上げており、特に東京オリンピック・パラリンピック関連や都心部の再開発工事がある関東一区は約1割、新幹線の延伸工事がある北陸は約2割と伸びが大きかった。それらの特需は必要数量に対して工期が短く、生コン工場に瞬発力が求められている。一方で復興需要のピークを越えた東北は、将来的に震災前の出荷水準を下回る可能性が示唆されている。
特需では一段と瞬発力が求められるケースが増えている。新国立競技場は設計変更などで着工は当初計画からおよそ1年遅れたが、開業時期は変わらず、生コンを短期間で納入することが求められた。北陸も新幹線開業時期が前倒しされて、年単位で納入する数量は増えた。
一方、特需のない地域では生コン出荷が漸減している。特に官公需への出荷比率が高い地域の需要環境が厳しい。公共工事もインフラの新設から維持管理へのシフトが鮮明になっている。公共工事も投資に対する費用対効果を考慮され、人口減少が進む地域では、これが将来の生コン需要に影響を与えそうだ。
市況については全国的におおむね堅調に推移している。経済産業省の生コン流通統計から算出した18年7~9月の生コン生産者価格は前年同期に比べ438円上昇し、1万5143円となった。昨年から相次いで生コン協組による値上げが実施されている近畿の上昇が目立った。
長年にわたって市況が低迷していた福岡も今年4月に員外社が加入したことを受けて、協組が値上げを実施。それにより、建設物価9月号の表示価格は4000円上昇し、1万3000円(18・18・20)となった。関東二区では甲府をエリアとする山梨生コン協組、つくばなどをエリアとする茨城南部生コン協組に員外社が下半期に相次いで加入。両協組とも1月からの値上げを打ち出しており、市況再建に向けて動き出している。
一方混迷しているのは新潟。1年で表示価格が4000円下落し7500円(同)と、全国最安値となった。出荷減による員外社との物件競合が大きな要因だ。協組は市況再建に向けて、員外社と加入交渉などを始めた。全国の県庁所在都市で1万円を割り込んでいるのは、新潟、甲府、高知の3都市のみとなっている。
人材確保へPR強化
生コン業界も人手不足に悩まされた1年だった。従来から続く建設工事の工期遅延の要因とされる職人不足に加え、足元で出荷が回復している地域ではコンクリートミキサ車の運転手不足が顕在化。さらに次世代を担う若い人材の不足が大きな課題となっている。こうした中、全国の生コン組合が人材確保に向けて、業界のPRを進めている。
全生連が今年3月に制定したイメージキャラクター「なまリンちゃん」は書類に貼付するシールや付箋紙、絆創膏などのノベルティグッズとして利用されている。また、ミキサ車のドラムに「なまリンちゃん」や園児が描いた絵画を貼付する事業も各地域で行われている。
また、災害発生時にミキサ車で消火用水などを供給する事業も全国各地で締結されている。こうした社会貢献事業も業界のPRに役立っている。人材確保に向けたPR事業は始まったばかり。継続的に取り組んで実効性を高めていく必要がありそうだ。