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2018年11月22日号

1;中庸熱需給が逼迫~関東一区の生コン

中庸熱セメントの需給が逼迫している。2017年度以降、関東一区で中庸熱セメントを使った生コンの需要が右肩上がりで伸びているためだ。今年度の販売量は80万トン程度と前年実績を約9%上回るもよう。2年前との対比では3割超の増加となる。増産余地がなくなり供給懸念が広がる中で、セメント協会は14日、セメントの品種変更を求める要請書を日本建設業連合会に提出した。
中庸熱セメントはダムなど土木用途のイメージが強いが、関東一区では10年以上前からマンションなど建築の基礎や躯体に一般的に使われている。セメント協会の統計によると、中庸熱の8割前後が関東一区で消費されており、そのおおむね半分が東京向けとなっている。
関東一区では昨年来、民間投資の復調とオリンピック特需が複合化して中庸熱需要が増加基調に入っている。17年度の販売量は前年比29・7%増の61万1千トンとなった。今年度に入り一段と勢いが増しており、上半期(4~9月)実績は35万8千トンと前年同期に比べて23・4%増加した。都県別に見ると、東京が7・3%増の16万7千トンで、神奈川が23・8%増の12万6千トン、埼玉が85・3%増の3万1千トン、千葉が2・1倍の3万4千トンと全域で急増した。
中庸熱の品薄感が広がり、生コン各社も需要対応に四苦八苦しているという。中でも神奈川は綱渡りの状態だ。今年度の中庸熱生コンの出荷数量は、神奈川生コン協同組合が前年比86・4%増の22万m3、湘南生コン協同組合が78・4%増の8万3千m3と急伸する見通し。マンション工事での採用拡大が主因で、1物件当たりの使用量は数千m3程度に過ぎないが、物件数が多い。一方、東京地区生コン協同組合は、上半期は33万m3と前年を1割強下回ったが、下半期はプラスで推移し、通期では前年並みの71万m3程度となる見込み。
太平洋セメント、住友大阪セメント、宇部三菱セメントが関東一区に中庸熱を供給している。セメント協会は、「(中庸熱は)原料組成の関係から製造工場が限定されるため、フル生産を行っても供給限界にほぼ達していることが判明した。このままでは安定供給に支障をきたす可能性が大きい」とし、「普通ポルトランドセメントなどへセメント種類を変更して生コンの配合の見直しが可能な物件については特段の配慮をお願いしたい」と日建連に要請した。
これまでに中庸熱の品切れで現場が止まるなどの事態は起こっていないもよう。年末まではギリギリ乗り切れると見られているが、セメント工場が定期修理に入る来春に供給不安が一段と深刻化するとの見方が多い。
来年度はリニア中央新幹線工事なども本格化することから、中庸熱需要はさらに膨らむ可能性がある。だが、工場の操業上の制約もあり、生産の上積みは限定的と見られている。