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2018年10月25日号

1;輸送力削ぐ納入変更~関東一区の生コン

関東一区の生コン市場では、秋の需要期を迎えて、生コンの輸送力不足が一段と深まっている。運転手が不足するなかで、多発する納入予定の急な変更やキャンセルが、輸送力を削いでいる。車両の手配が間に合わず、生コンの納入ピッチや打設量を落としてもらうなど現場に協力を求める動きも広がっている。
「車両の手配が日常業務になっている」。神奈川のある生コン会社は、部門の垣根を越えて、車両の手配に日々奔走する。輸送力を確保できるかが工場操業の生命線になっているためだ。
自動車検査登録情報協会のまとめによると、2017年3月末時点の関東一区のコンクリートミキサ車台数は9328台と過去最低だった12年3月末と比べ338台増えた。その一方で、輸送力の根幹を支える運転手は、高齢化の進行や他業種への離職などで慢性的に不足。千葉県の生コン会社幹部は「募集をかけても反応が鈍い。現状維持が精一杯だ」と指摘する。運転手を手当てできず、「ミキサ車が余る」光景も日常化している。
各生コン協同組合は輸送力不足を補うため、1物件当たりの納入工場を増やしている。これまで共同納入に難色を示していたゼネコンも容認に転じた。納入ピッチの緩和など現場に対する生コン側からの「要望」も比較的受け入れられやすくなっているという。
しかし、輸送力不足はさほど緩和されず、秋需を乗り越えられるかどうか不透明感も漂う。背景には工程遅れなど現場都合による納入予定の変更やキャンセルの常態化がある。
東京地区生コンクリート協同組合のまとめによると、17年度の納入予定3日前の変更は、1791件と前年度に比べ7割増えた。今年度も状況は変わっていない。9月の出荷数量は前年同月比22・3%減と19か月ぶりに前年実績を下回ったが、要因の一つが納入予定の変更やキャンセルの多発だ。その反動で10月に入り「キャンセル待ち現場」が急増しており、再び出荷予定が入りにくくなっている。
需要回復も影響
需要の回復も輸送力不足に拍車をかける。昨年度は、需要の地域間偏在が拡大したため、需要が低調な地域から好調な地域へとミキサ車が流れ込み、東京地区などの輸送力不足をカバーした。しかし、今年度は上期末時点の前年比で三多摩が18%増、神奈川が10%増、埼玉中央が19%増などと需要が広範囲に回復してきたことで、地域を越えた運搬車の貸し借りの流れが細っている。
「かつてのように現場工程の遅れを生コンの打設工程で調整できる時代ではなくなった。安定納入に向けてゼネコン、販売店、生コンの共通認識を高める必要がある」(東京の生コン会社)。輸送力不足は永続化する懸念がある。出荷の早朝集中も含め生コンの納入や現場工程のあり方を再考する時期にきている。