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2018年10月18日号

1;生コン価格上昇が波及~大阪

大阪や神戸などで生コンの原材料価格や運搬費が徐々に上昇してきた。大阪広域生コンクリート協同組合(大阪市、木村貴洋理事長)が諸資材などの値上げに賛意を表明、組合員に対し受入れを推奨していることが背景にある。大阪広域協組への大同団結で生コン市況が大きく改善した効果が、周辺業界にも波及してきた格好だ。
大阪広域協組は昨年暮れまでに兵庫県の神戸、淡路、北摂、北神、播磨、西部を事業エリアに組み入れ、2つの府県にまたがる巨大組織となった。組合員数は159社184工場(10月1日時点)、出荷規模は700万m3超と名実ともに国内最大。市場占有率はおおむね100%に達する。
足元の市況は、『建設物価』によると、1万5800~1万6200円(18・18・20)とエリア全域で2年前に比べ1750~5700円上昇した。大阪6ブロックの平均価格は約1万7800円で2割上がっている。
同協組は、来年4月1日に建値を1万8500円から2万1800円に改定。同日以降の契約分から販売価格を3000円程度引き上げ、各ブロックの状況を見ながら弾力的に浸透を図る方針だ。
木村理事長は「原材料メーカーも人件費や輸送費などの上昇に直面している。『三方良し』を実践するため、値上げの受け入れを推奨することにした」という。新増設の抑止など生コン市場を安定させる狙いもある。
セメント各社はトン当たり1000円程度、骨材会社は同600円程度、混和剤メーカーはキロ当たり10~20%の値上げをそれぞれ表明している。
ただ、原材料価格は出荷ベースで上がるのに対し、生コンは契約ベースでコスト転嫁に時間がかかるため、「組合員各社は生コンの平均売価の上昇を勘案しながら、値上げを段階的に受け入れることになると思う」(同)。契約残が全て新契約になるまで2年以上かかるという。
また、同日から生コンJIS区分の普通コンクリートのスランプ値差を撤廃し、各呼び強度一本価格に改める。各種割増料金や付帯条項なども改定し、今月中に新価格表を公表する予定だ。
新価格長期据え置き
「新価格は5~10年据え置くつもりだ。この間、コストは上がるだろうが、適正な収益をあげられるよう合理化を徹底的にやっていく」(同)。昨年度は構造改善事業(集約化・廃棄斡旋支援)で8工場のシェアを買い上げ、設備を廃棄した。今年度は「協業」の解消による工場廃棄を掲げ、これまでに16組(29社33工場)のうち、3組の統合が完了した。残りの13組も年度末までに何らかの方法で協業を解消する。協組は支援措置として1000万円を上限に工場廃棄費用を助成することを決めている。
工場廃棄を再開へ
生コンの需要も中長期的に減少基調で推移する可能性が高い。今年度の出荷数量は4~9月で351万m3と想定に比べ約18万m3下振れた。大阪で民間投資が低調なためで、今年度予想を740万m3から705万m3に引き下げた。今後、工法の変更もあいまって毎年5%ずつ減っていくというのが同協組の見立て。そのため、コストと需給バランスを両睨みで、来年度からシェア買い上げ方式の工場廃棄を再開する方針だ。
一方、将来の協組の枠組みも検討していく。木村理事長は「現在の当協組は過渡的な姿だ。巨大になったことで力を持った反面、運営には難しさも伴う。早ければ3年内外で分割の道を選ばざるを得ない時期が訪れるかもしれない。たとえそうなっても、市場が再び崩れることのないよう各ブロックの強化など安定の仕組みをしっかり作り上げておきたい」と語っている。