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2018年09月20日号

1;スラッジ水を高度利用~広島生コン協組ら

北川鉄工所、東亜ディーケーケー、まるせ、広島地区生コンクリート協同組合、島根大学の5者が生コンスラッジ水を自動的に全量再利用する高度利用システムの実用化に向けて共同開発を進めている。このほど、同システムの有効性を検証するための実証設備が完成し、広島市のまるせ五日市工場内に設置された。
同システムの開発は新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)の「平成29年度戦略的省エネルギー技術革新プログラム」に採択されている。また、有識者で構成される開発推進委員会の意見を取り入れながら実用化を目指している。9月25日には開発推進委員会の立会いで実証設備の視察を行う予定だ。
生コンスラッジ水に安定剤(凝結遅延剤)を添加し、セメントの水和反応を一時的に停止させ、次回以降の生コン製造時に再利用する方法は、これまで生コンスラッジ水中のセメントの状態と安定剤の濃度をリアルタイムに把握する手段がなく、安定化スラッジ水のセメント分としての品質が証明できないため、完全実用化が難しかった。
同システムは①生コンスラッジ水の状態(セメント活性、安定剤濃度)を定量分析的手法でリアルタイムに測定する技術②それを活用したスラッジ水の自動安定化管理技術③安定化スラッジ水によるセメント置換システム――からなる。同システムで生コンスラッジ水の品質を証明して、設備の自動運転で全量の再利用を図る。また並行して島根大学で安定化スラッジ水中のセメントとその固化体をセメント化学的な視点で評価し、安定化スラッジの物理的評価以外の項目についても検証していく。
すでに試験室レベルでは固形分率9%程度での生コンスラッジ水によるセメント置換が可能なことを確認している。実用化に向けた技術の評価段階では全国生コンクリート工業組合連合会の協力も得て、複数の生コン工場で実機による検証を計画している。
開発5者によると、システムの導入で、セメント活性度・安定剤濃度測定装置やセメント置換演算制御盤などの新たな設備導入や安定剤の購入費などのコストが発生するが、廃棄物処理費の削減やセメント使用量の最適化などで生コン工場のトータルコスト削減が期待できるとしている。同システムが国内1500か所の生コン工場に導入された場合、セメント製造に使用されるエネルギーについて、原油換算で年間約5万2千m3、二酸化炭素で約36万トンの削減効果を見込んでいる。