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2016年10月06日号

1;スランプ規定見直し~国土交通省

「スランプ、スランプフロー値は施工者が決定する」。国土交通省のコンクリート生産性向上検討協議会(前川宏一会長)が、土木物件のスランプ規定を見直す議論を進めている。現在は発注者が生コンJIS(A5308)からスランプ値を指定しているが、9月28日に開かれた会議でこれを参考値扱いとする考えが示された。同協議会が採用拡大を目指す高流動コンクリートを施工者が選択しやすくする狙いだ。

同協議会は3月に発足。高流動コンクリートのほか、プレキャストの大型化、鉄筋継手の機械式定着工法、埋設型枠など生産性の向上を促す要素技術のガイドラインを策定する委員会を設置した。第1回目の会合で、高流動コンクリートを採用する際に課題となるコンクリートの打設に関する規定を見直す方針を示していた。

水セメント比確認

今回、同省は「新技術の導入促進、施工の自由度を高める」ため、2つのスランプ規定見直し案を示した。「案1」はスランプ、スランプフロー値をこれまでの検査項目ではなく参考値とし、生コンの品質を確認する方法として空気量や圧縮強度試験、単位水量試験などに加え、新たに水セメント比(W/C)を納入書で確認する。「案2」はスランプ、スランプフロー値を構造・配筋を考慮して設計段階で決める。両案とも、高密度配筋の構造物など流動性の高いコンクリートが効果的に活用できる工種や部位から試行的に採用し、コストも比較する。

「案2」は現段階では設計者の負担が大幅に増えることから、「将来的な理想」として掲示しつつ、協議会では短期的に実現可能な「案1」で検討を進めることにした。

「案1」では、発注者は生コンのスランプ値設定に関与せず、施工者に委ねる形となる。同省は「スランプは施工性能を評価するもの。コンクリートの品質や構造物の性能で評価していきたい」としている。施工者は発注者が示した参考値(スランプ)を基に、施工条件や工法、コストなどを比較して高流動コンクリートの使用可否を判断する。また、副次的効果として、生コン工場ではスランプの上限要求解消も期待される。

同省では案1を具体化することで、打設時の生産性向上、設計変更や協議に係る労力の低減につながるとしている。