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2016年09月29日号

1;粘性制御がテーマに~混和剤

コンクリート用化学混和剤の技術開発のテーマとして「コンクリートの粘性制御」が注目されている。粘性を自在に制御できる混和剤が実現すれば全ての強度領域でコンクリートの施工性改善が期待できるためだ。生コン工場におけるコンクリートの品質管理の改善にもつながるとしてメーカー各社で開発が進められている。

都市部の建築工事ではコンクリートの高強度化が進んでおり、それに伴う粘性の増大が施工の課題となっている。そのため、施工性を改善する観点から粘性を低減する混和剤へのニーズがある。

今年に入って粘性が低減できる混和剤の製品化が進展している。BASFジャパンがコンクリートの粘性を大幅に低減する高性能AE減水剤「マスターイース(MasterEase)」を開発、8月から販売を開始した。BASF社が開発した新型ポリマー「PAE」を主成分とした高性能AE減水剤で、粘性を大幅に低減することでコンクリートの製造効率やポンプ圧送性の向上、配合の最適化、仕上げの向上などが図れるとしている。トップシェアメーカーであるBASF社が販売を開始したことで、今後、主要メーカー各社でも粘性低減タイプの混和剤の製品化が進む可能性もある。

一方、土木工事ではトンネル工事を中心に、粉体量の少ない普通強度領域の高流動コンクリートが汎用化している。粉体量が少ない配合では材料分離が懸念されるため、混和剤の機能によって粘性を高めるという、相反したニーズもある。粘性を付与する混和剤については、NEXCO3社(東日本、中日本、西日本)がトンネル工事で中流動コンクリートを標準化したことを契機に、主要メーカー各社が増粘剤含有タイプの高性能AE減水剤を相次いで製品化した。NEXCO発注工事だけでなく、国土交通省発注工事でも採用されるケースが出てきており、各社で販売実績が増えている。また、増粘剤含有タイプの高性能AE減水剤を使用した高流動コンクリートの大臣認定を取得して建築工事での採用を検討する動きもある。

国交省の「i―Construction(アイコンストラクション)」では生産性向上の観点から、高流動コンクリートの積極活用が検討されている。また、建築工事での高流動コンクリートの採用拡大をねらって、生コンJIS(A5308)の普通強度領域にスランプフロー管理を導入することも検討されている。増粘剤含有タイプの高性能AE減水剤については、規格・基準類の整備によって、採用が拡大しそうだ。