1;高・中流動コンクリート 基準に反映
高・中流動コンクリートが規格・基準類に反映され始めた。土木分野ではトンネル覆工コンクリートとして採用されるケースが増えており、土木学会は10年ぶりに改訂したトンネル標準示方書に高・中流動コンクリートに関する記述を盛り込んだ。生コンJIS(A5308)でも普通強度領域のスランプフロー管理導入に向けた検討が始まるなど、高・中流動コンクリートを採用しやすい環境が整ってきた。
土木分野ではNEXCO3社(東日本、中日本、西日本)がトンネル覆工コンクリートの品質向上対策として中流動コンクリートを標準化したことを契機に採用が進んだ。従来の高・中流動コンクリートは材料分離抵抗性を確保するために粉体量の多い高強度配合となることや、フライアッシュ(FA)や砕石の石粉を使用するため、生コン工場でサイロの確保が必要となることが課題となり、普及に至っていなかった。混和剤メーカー各社が増粘剤一液型の高性能AE減水剤を相次いで販売したことでそうした課題が克服され、土木分野で採用実績が増えている。
土木分野での採用が一般化したことを受けて、土木学会はトンネル標準示方書の覆工の設計及び施工に高・中流動コンクリートに関する記述を盛り込んだ。覆工コンクリートの現場配合の解説で、天端部での締固め不足によるコンクリートの密実性の低下や充填不足による背面空間の発生防止対策として、「材料分離抵抗性を損なわずに流動性を高めた中流動覆工コンクリート等を標準的に適用する例もある」と明記した。その上で、中流動覆工コンクリートは使用材料の品質変動や計量誤差による影響を受けやすいため、使用する場合には製造、施工とも厳しい品質管理が必要となることや、型枠の補強も検討しなければいけないとした。
覆工の設計では、ひび割れ対策として流動性の高いコンクリートが有効であるとの記述を追記した。また、配筋が過密で充填が難しい場合だけでなく、無筋コンクリートでも覆工の高品質化を目的に採用されており、施工性と経済性を考慮したうえで流動性の高いコンクリートの使用を検討することが望ましいと明記した。
トンネル標準示方書に記述されたことで、高・中流動コンクリートはさらに普及していくと見込まれる。首都圏では、NEXCO発注の外環道のほか、国土交通省発注の臨海部における地下トンネル(国道)などで採用が検討されている。特に複雑な形状となるランプ部やJCT、鉄筋量の多い箇所で使われる見通しだ。
首都圏の生コン工場では高・中流動コンクリートに対応する動きがある。増粘剤一液型の高性能減水剤の使用を想定してプラント更新時に混和剤サイロを増設しているほか、建築分野でも採用が広がると予想してゼネコンと共同で大臣認定を取得する生コン工場も増えている。
2019年に予定されている生コンJIS改正で普通強度領域のスランプフロー管理が盛り込まれれば、高・中流動コンクリートの採用が飛躍的に増える可能性がある。