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2016年07月21日号

1;未利用資源の利用拡大~JCI

「平時に未利用資源の利用拡大を進めることが、災害発生時に活かせる」――。日本コンクリート工学会(丸山久一会長=長岡技術科学大学特任教授)が未利用資源の利用拡大に向けて提言した。石炭灰、鉄鋼・非鉄スラグ、再生骨材などこれまで利用されてこなかったJIS外の資源に対して新技術を積極的に導入し、コンクリート用骨材や混和材料などへ利用する領域を広げる。コンクリートにおける未利用資源の利用拡大に関する特別委員会(久田真委員長=東北大学大学院教授)が19日、同学会本部で記者会見を開いた。

同学会は、東日本大震災で発生した災害廃棄物の処分と利活用で培った技術やノウハウの発展を目指して、2014年に同委員会を設置し、2年間活動してきた。

同委員会の提言の枠組は現状把握、課題克服に向けた考え方、利活用推進の枠組みの3項目。課題克服に向けた考え方については、東日本大震災における災害廃棄物(がれき)を利用した教訓を活かす。トレーサビリティを確保したうえで、品質基準を満たさない材料でも、それを用いた製品や構造物の性能で評価する仕組みを導入することを求めた。

災害発生時には、平時の品質基準を満足することが難しい材料を使用せざるを得ないケースが発生する。この場合、JISK0058(スラグ類の化学物質試験方法)で示されているように品質基準は満たしていない材料を用いて製造した生コンやコンクリート製品が性能を満たせれば、これらを使用できる環境を整備するべきとした。

また、同委員会が注力したのは石炭灰の活用である。石炭灰は他の未利用資源に比べて発生量が多い。現在はJIS灰の生産比率が低く、非JIS灰の多くはセメント原料として利用されている。しかし、セメント需要の見通しを勘案すると現状以上に受け入れる余力がない上、石炭火力発電から排出される石炭灰は依然として増加傾向にあることから、現在セメント用原料や埋め立てなどに用いられている石炭灰を有効利用すべきとした。具体的には現在セメント用原料として用いられている非JIS灰を再燃焼、スラリー化して未燃カーボンを除去してコンクリート用混和材として活用する方法や、セメントを用いて石炭灰を固化・造粒した人工骨材化などを提案した。

一方、セメント産業が他産業から排出される廃棄物、副産物を年間2000万トン以上受入れていることを紹介し、「震災がれきを処理してもJIS規格を満たすセメントを製造できた」(久田委員長)とし、静脈産業の代表格と評した。それができた理由は、平時から廃棄物や副産物を受入れてきたためと指摘し、「資源循環の静脈を担う目的で開発された技術については、価格や品質などの課題があっても積極的に導入していくべき」(同)とし、優位性を持たせる事を求めた。

丸山会長は「良質なコンクリート材料が入手しにくい途上国で、必要最小限の性能(均一性、強度、耐久性)を満たす基準があれば参考になる」とし、海外展開に期待を寄せている。また、発注者が新技術の導入する際に責任が求められることについて「何事も最初から責任を強調しすぎることは新技術の導入を妨げる」と述べた。

来月4日に報告会

同委員会では、来月4日に東京・日比谷図書文化館で成果報告会を開催する。久田委員長は「これまでとは一味違った報告会にする」と語った。