1;施工性能指針を改訂~土木学会
土木学会は6月に「施工性能にもとづくコンクリートの配合設計・施工指針(案)」を改訂する。2007年の発刊以来、初めての改訂で、コンクリートの施工性能をよりわかりやすく示したほか、発注者及び設計者への浸透を図る目的で「設計段階における施工性の確保」という章を新設した。また、施工性能を評価する試験方法として、土木学会規準の「ボックス形容器を用いた加振時のコンクリートの間隙通過性試験方法(案)」を盛り込んだ。
土木構造物のコンクリートはスランプ8cmが標準とされてきたが、近年は鉄筋量の増加、過密化もあり、適切な充填が難しいケースも多い。そこで、同学会は構造部材や施工条件に応じた配合設計を設計段階で行うことを目指して、07年3月に同指針を発刊した。施工性能指針改訂研究小委員会の橋本親典委員長(徳島大学大学院教授)は改訂の主旨について「指針の発刊から9年余りが経過したが、発注者や設計者に考え方が十分に浸透するまでには至っていないことから、コンクリートの施工性能をより明確に示して、使いやすいものにすることを目指した」と話す。
今回の改訂では、「コンクリートの施工性」と「コンクリートの施工性能」の定義と関係性を明確に示し、解説を加えた。コンクリートの施工性は環境条件や構造条件、施工条件などを含めたコンクリート工事全般を指し、コンクリートの施工性能はコンクリート自体が有する充填性や圧送性、材料分離抵抗性などを指す。打込みのスランプとセメント量の関係も図解し、施工条件に対して適切なバランスを有する配合を示した。
単位セメント量の上限値と下限値、スランプの下限値の範囲内であれば全て適切な施工性能を有するが、材料やコストなどの制約もあることから、施工性能をベストなものからベターなものまでの3段階に分類した。なお、この図の境界線自体は変更していない。
今回の改訂で新設した「設計段階における施工性の確保」では、発注者や設計者向けにコンクリートの施工性とコンクリートの施工性能の関係をわかりやすい形で解説した。橋本委員長はその意図について「コンクリートは強度や耐久性が重要だが、それを実現するためには施工性能も重要だ。設計段階で決めたスランプのコンクリートが適切に充填されるような設計をしてもらえるようにしたいと考えた」と話す。
コンクリートの施工性能を評価する試験方法として「ボックス形容器を用いた加振時のコンクリートの間隙通過性試験方法(案)」を開発し、盛り込んだ。同試験法は「コンクリートの施工性能の照査・検査システム研究小委員会」で議論したもので、ボックス形の充填装置とバイブレータを用いて、コンクリートが鋼材間を流動する際の間隙通過性を評価する。「同じスランプでも骨材の品質などによって施工性能が異なることがある。今回開発した試験方法はコンクリートが間隙を通過するまでの時間を測定するもので、施工性能を明確に確認できる」(橋本委員長)。指針には試験の模様を映像として収録したDVDを付録として付けて、試験方法や手順を正しく理解してもらえるようにする。
スランプを大きく設定した場合に懸念されるブリーディングの発生に関する注意事項も追記した。ブリーディングは単位水量が大きくなると増えることから、スランプを設定する際に単位水量が土木の上限値である175kg/m3以下であることを確認し、上限値を超える場合には高機能タイプのAE減水剤や高性能減水剤などで対応することなどを明記した。
同学会は6月23日に東京・四ツ谷の同学会、7月14日に大阪交流会館で指針改訂の講習会を開く。他地域での開催も計画中としている。