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2015年12月03日号

1;4400万トン割れの公算~セメント

今年度のセメントの国内需要(輸入含む)が4400万トンを割り込む可能性が出てきた。減少基調に歯止めがかかるとされていた下期に入っても不振が続いており、12月以降も急な回復が見込めないためだ。公共投資が減り、民間需要も盛り上がりを欠いた状況が続く中で、すでにセメントメーカー各社は、4600万トンとしていた今年度の国内需要予想を4450万~4500万トンに下方修正しているが、足元のペースはそれにも届かない状況だ。杭データ流用問題というかく乱要因もあり、問題の広がりによっては需要を下押す圧力が一段と強まる懸念もある

2013年度の4771万トンが直近の内需のピーク。震災復興工事や全国各地での災害復旧工事に加え、消費増税を前にした住宅建設が旺盛だった。セメント協会は中期的に高水準の需要が続くとして、14年度は4800万トンと予想した。ところが、消費増税のインパクトが予想以上に強烈だったこと、災害復旧工事が相次いで終わったことなどが響き、仕上がりは4555万トンにとどまった。

減少要因が複合化

セメント協会は民間設備投資が回復に転じるなどとして今年度の予想を小幅増の4600万トンと設定、メーカー各社もそれに準じた。しかし、昨秋起点の減少局面から脱する兆しは見えず、上期(4~9月)内需は前年同期に比べ6・4%減(146万トン減)の2115万トンと落ち込んだ。

補正を含めた公共投資予算の縮小、住宅投資の回復遅れ、オリンピックなど特需対応に備えたゼネコンの受注手控え、RC造からS造への設計変更など減少要因が複合化。需要の地域偏在も広がり、中でも北海道や沖縄を除いた近畿以西が厳しい。最大需要地の関東一区も東京都心など一部を除き深刻な需要の減少に直面している。

下期(10~3月)は前年同期のレベルが低かった反動で、小幅増加するという見方が多かった。しかし、10月の国内販売(輸入除く)が前年同月に比べ3・3%減り、11月も20日時点の1日当たり前年比が7・9%減となった。2ケタマイナスだった昨年11月実績からさらに落ち込むという事態に、メーカー各社は衝撃を受けている。

来年度は回復も

26日に開かれたセメント協会の定例記者会見で藤末亮流通委員長は今年度の内需について「4400万トンを少し下回る可能性がある」と指摘した。10年度の底から13年度までの3年で609万トン増えた内需は、この2年で370万トン以上縮小することになる。

今年度が底で、来年度から回復基調入りするというのが現時点での一般的な見方だ。震災復興が続くうえ、リニア中央新幹線工事、東京オリンピック・パラリンピック関連工事も徐々に本格化することが背景にある。ただ、五輪前まで増えたとしても4600万トンが限界との指摘もある。不確実要因は杭データ流用問題で、これから来年度にかけて需要にどういう影響が出てくるか未知数だ。

太平洋セメントが先月開いた決算説明会で福田修二社長は「中計では(今年度から3年の内需を)4600万~4800万トンで見ていたのが、200万トンくらい低くなり4400万~4600万トンになりそうだ」と指摘。20年以降に先送りされる工事も少なくないとして、五輪後の需要の減り方は「崖ではなく、スロープになる」との見通しを示した。