1;モルタルバー優先削除~JCI
日本コンクリート工学会(JCI)で、アルカリ骨材反応に関する試験規格の見直しが進められている。アルカリ骨材反応試験としてはJIS化されている、化学法(JISA1145)、モルタルバー法(同1146)に「モルタルバー法の試験結果を優先する」との記述があるが、これが削除される見通し。また、両JISに記載されている判定基準に関する記述も見直される方向にある。
化学法とモルタルバー法は元々、生コンJISの附属書に記載されていたが、2001年に単独の試験規格として制定されたことを機に、JCIがJISの原案作成団体となった。モルタルバー法の試験結果を優先する記述は、附属書の時代からそのまま運用されていた。これまで生コン工場における骨材の試験成績表ではモルタルバー法によってアルカリ骨材反応を調査することがほとんどだったが、文言の削除によって化学法を用いるケースも出てきそうだ。ただ、モルタルバー法優先の文言が削除されても両試験で「無害」、「無害でない」を確認するようになるため、大きな混乱は生じないとの意見がある。
判定基準に関する記述の検討では、JCIは11年度にASR診断の現状とあるべき姿研究委員会を設置し、アルカリ骨材反応の抑制対策を検討してきた。現行の生コンJIS(A5308)では、対策として附属書Bに記載①アルカリ総量3kg/m3以下②混合セメントの使用③無害骨材の選定が記載されているが、同委員会は「適用範囲外の事例」があるとし、新たなASR抑制対策を検討していた。同委員会は昨年の報告会で、現行のJCI基準であるAAR―3(コンクリートのアルカリシリカ反応性判定試験方法)やDD2(アルカリシリカ反応が疑われるコンクリート構造物のコア採取による膨張率の測定方法)の修正案のほか、新たな試験方法として、アルカリ溶液や飽和塩化ナトリウム溶液を用いた膨張率の測定方法を提案した。
すでに11年から独自の対策を導入しているJR東日本では、化学法とモルタルバー法のJISで定められた「無害」、「無害でない」の判定基準を「E無害」、「準有害」、「E有害」とする独自の判定基準を導入。これにあわせて同社は、準有害については、混合セメントの使用あるいはアルカリ総量2・2kg/m3以下、E有害については、混合セメントを使用して対策を行うこととした。判定基準の見直しと同時に生コン工場で対応可能な対策を提示したことで、今のところ大きな混乱は生じていない。
JISから判定基準が分離された場合、今後JR東日本のように発注者が判定基準を独自に決めることも予想される。今後、各方面でデータの蓄積、調査が行われそうだ。