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2015年09月24日号

1;耐久性の寄与率検証~混合セメント

混合セメントを使用したコンクリートの評価方法を見直す動きが進んでいる。大手ゼネコン5社(大林組、鹿島建設、清水建設、大成建設、竹中工務店)と宇都宮大学、東京理科大学の7者は、建築研究所と共同で、建築基準整備促進事業として「混合セメント等を使用したコンクリートの水セメント比の評価方法に関する検討(M1)」を進めている。

高炉スラグ微粉末やフライアッシュ(FA)をコンクリートの結合材として用いた場合、現行の品確法では耐久性に関する寄与率が、高炉スラグ微粉末では普通セメントの70%、FAではゼロと定められている。このため、これまでに混合セメントなどを使用したコンクリートは集合住宅などには採用しづらかった。そこで7者は今回の研究で、水セメント比による耐久性の寄与する割合(寄与率)を合理的に評価できる基準に見直して、混和材が使用しやすい環境を整える。

7者は昨年度から混合セメントなどを使用したコンクリート構造物に関して、日本建築学会と連携して実施した既存建物の耐久性調査、既往の文献の調査に加え、混合セメントなどを使用したコンクリートの耐久性を調査する実験を行った。

調査を実施した既存建物は1958年に竣工し、約55年間供用されてきた。同建物には、セメント代替として高炉スラグ微粉末が50%程度代替されている。この中から環境条件が異なる屋内の打ち放し部位、屋内の仕上げ材がある部位、屋外の仕上げ材がある部位からコアを採取し、コンクリートの中性化進行速度を調査した。この結果、高炉スラグ微粉末を50%程度置換した構造体コンクリートであっても、仕上げ材がある部位ではほぼ中性化していないものもあった。これにより、高炉セメントを使用したコンクリートも適切に使用すれば、長期使用に耐えられると推測できる。

昨年度に行った耐久性に関する実験は①混和材(高炉スラグ微粉末、FA)置換率と水結合材比の違いが中性化速度に与える影響②フライアッシュの置換率と養生条件(養生方法・養生温度)が耐久性に与える影響③コンクリートの中性化に影響を与える混和材の影響を非破壊試験で評価する手法の3つ。①によって、条件にもよるが、寄与率として高炉スラグ微粉末で80%程度、FAが20%程度となる場合もあり、混合セメントなどを用いた場合でも、中性化を抑制する効果が期待できることを確認したほか、②で初期材齢に高温養生を施した場合、中性化速度係数が小さくなることを確認した。これを受け今年度は模擬部材を作製し、養生方法、環境条件を考慮した評価方法を検討する。また、昨年から引き続き促進中性化試験の代替となる評価手法の検討を進める。

中性化促進試験の代替試験の検討を担当している今本教授は「コンクリートの耐久性は今のところ中性化で決められている。一方で長い間供用されていた構造物はコンクリートが中性化していても鉄筋が腐食していない例も多い。コンクリートの中性化による鉄筋の錆びが耐久性における根本的な問題。研究を通じて、コンクリートが中性化していても鉄筋が錆びていなければ、耐久性が保たれている場合もある」とした。