1;特需に備え現有維持~セメント輸送
セメントの海上輸送能力が向上している。セメント協会のまとめによると、2015年4月1日時点のセメントタンカーは133隻と前年から4隻増え、積載量が3%増の57万3千トンとなった。国内需要の回復を背景に、通常は新造船と入れ替える老朽船を延長利用するなど船団の増強が進められているため。その一方で需要は昨年度減少に転じ、足元も弱い。海上輸送力は過剰感が強まっているものの、メーカー各社は、東京オリンピックなどで需要が盛り上がるとされる16~17年度に備えて現有体制を維持する考えだ。
陸上輸送能力の増強も進む。バラトラックは単車が129台増の3265台、トレーラが26台増の1009台で、合計4274台と155台増えた。4年連続の増加で、11年比で498台増えた。また、SS(サービスステーション)は前年と同じ341。貯蔵能力は362万4千トンとおおむね横ばいだった。
セメントタンカーは2000年代終わりまで130隻台で推移していたが、10年に128隻、11年に123隻と漸減。内需の急減でメーカー各社が生産・物流体制の合理化を実施したためだ。
しかし、その後、需要が回復に転じ、海上輸送力不足が顕在化した。メーカー各社は一転、輸送力増強へと舵を切り、13年は124隻、14年が129隻となり、今年は6年ぶりに130隻を超えた。積載量も内需が比較的堅調だった06年水準に戻った。
メーカー各社は老朽船の延長利用のほか、新造船の積載量を当初設計よりスケールアップさせるなどあの手この手で海上輸送力の増強を進めてきた。
しかし、13年度に4770万トンまで増えた需要は、昨年度は4555万トンと200万トン以上減った。今年度予想は4600万トンと回復力は弱い。現行の輸送力で4800万トンに十分対応できるとされる中で、過剰感が強まり、物流コストも膨らむ。「確かに海上輸送力が(需要に)勝っているが、タンカーを減らすつもりはない。下期から増加に転じる可能性もあるためだ」(セメント大手幹部)。
需要の見通しはメーカーによって異なるが、五輪特需や被災地復興が重なる16~17年度に盛り上がりをみせて、4700万~4800万トンになるとの見方がある。メーカー各社はそれを乗り切るために、足元のコストアップには目をつむり現有体制を温存する意向だ。逆にいえば、来年度からの2年が適正能力を見極める期間となりそうだ。
また、今年度は新造船が6隻(積載量3万4500トン)就航する予定。余剰能力をさらに増やす必然性はないことから、全般に老朽船と入れ替えるSBが選択される公算が大きい。