1:太平洋セメント、23年度までに石炭灰の引取量を500万トンへ
太平洋セメントは、石炭灰の引取量を2023年度までに現行の300万トンから500万トンと7割増やせる体制の整備に乗り出す。「セメントの原単位(粘土代替)アップと輸出の拡大が柱」(不死原正文執行役員・環境事業部長)で、それぞれ100万トンの増量を目論む。新設の石炭火力発電所が相次いで運転を開始する17年度以降、石炭灰の発生量が急速に増加すると見込まれている。太平洋セメントはそれを取り込み、環境事業の成長エンジンとする。
石炭灰の発生量は最新のデータによると約1300万トン。そのうち約840万トンがセメント分野で活用され、主に原料代替としてリサイクルされている。原子力発電所の再稼働と廃炉の問題を背景に、電力各社が相次いで石炭火力発電所の新設を計画。石炭灰発生量も増加を続ける見通しで、20年代中頃にピークを迎える。新たに発生する石炭灰は最大で600万トンに達するとの見方もある。 太平洋セメントは、石炭灰の引取要請が高まることを見据えて、13年度に「石炭灰活用推進委員会」を立ち上げ、過去の研究データや有効利用技術の洗い出しを含め利用メニューの整理・検討を行っている。昨年10月に開いた同委員会で中間報告を行い、利用メニューを確定した。 原単位の向上と輸出の拡大の両輪で23年度までに石炭灰の引取量を200万トン増やせる体制を築き上げる方針だ。 同社のセメント1トン当たり石炭灰原単位は110~120トン。石炭灰の性状を乾燥状態から湿潤状態に変えることで取り込める量を増やす。さらに、セメントの不需要期で生産量も減る夏に石炭灰が増えるなど、需給の季節変動を緩和することで原単位を引き上げる考え。石炭灰を貯蔵・出荷する既存拠点(アッシュセンター)のフル活用とともに、拠点の拡充も視野に入れる。 石炭灰の輸出は、02年から韓国向け、12年から香港向けにそれぞれ開始した。昨年度の輸出実績は前年比17%増の70万トンだった。 同社は今後、セメント製造工場を保有する東南アジアへの輸出ルートも開拓したい意向だ。 石炭灰活用推進委員会は今年度末で活動を終える。4月以降、新たに立ち上げる予定のプロジェクトチームでテーマを絞り込んで検討を進め、「設備投資計画を含め実施に向けた具体案を年内にまとめたい」(同)としている。