1;未達分確保に軸足~セメント
来年度のセメントメーカー各社のセメント価格政策は、新たな値上げの打ち出しは見送られ、これまでの値上げの未達成分の実現や低採算価格の是正に軸足が置かれそうだ。ただ、他社動向の様子見姿勢も見られ、今後、値上げを打ち出すメーカーが出てくるようだと、追随する動きが広がる可能性もある。
直近でメーカー各社がセメント・固化材の値上げを打ち出したのが2013年度。事業継続可能な価格の確保を主眼に掲げ、住友大阪セメントが先行表明し、太平洋セメント、宇部三菱セメントといった大手やトクヤマなど中堅もこぞって後を追った。震災復興などで需給が締まったこと、セメントの7割を消費する生コン製造業界の業況が全般に好転するなど値上げが通りやすい環境が整ったとの判断が背景にある。値上げ額は1000円が中心だった。
だが、メーカーによって値上げの時期が異なり、その姿勢にも強弱があったこと、生コン会社の抵抗が予想以上に強かったことから交渉は長期化した。実際に有額回答が積み上がり始めたのは今年の年明け以降だった。足元でも未決着の客先などに対象を絞って交渉が続けられている。
交渉の進展を映して過半の都道府県庁所在地で調査会の表示価格が200~300円を中心に、最大で500円引き上げられた。専業大手2社の14年4~9月期の連結決算で値上げ効果が発現、営業利益ベースで太平洋セメントが10億円、住友大阪セメントが4億円を確保した。15年3月期通期では太平洋セメントが26億円、住友大阪セメントが10億円を見込むが、5月発表の見通しからは18億円、4億円それぞれ引き下げている。
値上げの声上がらず
値上げの浸透は不十分だが、現時点でどこからも来年度値上げの声は上がっていない。先月7日に開かれた住友大阪セメントの決算説明会で関根福一社長は、売価改善努力を続けるとしつつ、来年度に値上げをやるかどうか「他社動向を見て判断したい。突出できない」と指摘した。
宇部三菱セメントは近く今年度の値上げの成果を総括したうえで、来年度以降の価格政策を組み立てる考え。少なくとも積み残しの獲得に向けた交渉は継続する意向だ。
最大手の太平洋セメントは来年度、11年度に打ち出した1000円値上げの未達分の浸透とともに、低採算価格の是正を主眼に交渉を続行する構え。地域間やユーザー間の値差圧縮にも引き続き取り組むとしている。