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2014年11月27日号

1:需要盛り上がらず~セメント・生コン

セメント、生コンの需要は依然として盛り上がりを欠いている。需要が最も膨らむ秋の需要期を迎えているが、10月のセメントの国内販売は前年実績を下回り、11月も低調に推移しているもようだ。セメントとの連動性が高い生コンも同じ傾向と見られる。これまで需要の下押し要因とされてきた建設業界の熟練工などの人手不足や資機材の不足による着工、工程の遅れだけでは「説明できない」(大手セメントメーカー)。セメント各社は輸入を含めた今年度の国内需要を前年比0・6%増の4800万トンと予想しているが、下振れは必至で4700万~4750万トンにとどまる可能性が出てきた。

セメント、生コンの需要は、民間投資の活発化や東北被災地での震災復旧・復興を背景に、2011年度に増加局面入りした。だが、今年度に入り減速感が広がり始め、4~9月はセメントが前年同期に比べ1・3%減の2261万トン、生コンが同1・7%減の4694万m3となった。人手不足による工事の遅れに加え、九州などの特需の終息、需要地の東北、関東一区での工事の端境期入りが要因とされた。ほぼ前年並みの水準だが、上振れを期待する中で前年実績を下回り、メーカー各社からは「予想外」との声があがった。

10月以降は、工事計画が豊富なこと、東北、関東一区で端境期から脱するとの見通しから、需要は力強さを取り戻すというのがメーカー各社の見立てだった。ところが、予想に反して需要は盛り上がりを欠いたままだ。

「人手不足などで着工が遅れているのは事実で、土木工事向けのセメント納入が数か月単位でずれている。ただ、それだけでは説明できない」(同)。人手不足に加え、公共事業の入札不調、労務費用や諸資材費用の高騰などによるマンション建設の凍結・延期、鉄筋コンクリート造から鉄骨造への工法変更など諸々の要因が複合化して需要の下押し圧力が強まっているもようだ。

太平洋セメントの福田修二社長は12日の決算説明会で「(需要減の要因は)工事の遅れと需要がなくなるのは大きな違い。ウォッチしておかないといけない」と指摘した。

メーカー各社は今年度の国内需要予想を4800万トンで据え置いているが、下振れを織り込み、4~9月期の決算発表に合わせて自社の販売見通しを下方修正した。太平洋セメントは従来予想に比べ19万トン減の1663万トン、三菱マテリアルは6万トン減の743万トン、トクヤマは10万トン減の355万トンにそれぞれ引き下げた。内需の不振を受けて三菱マテリアルや宇部興産は輸出を増やしている。

「需要はすぐに回復しないのではないか」(同)。足元の状況では、内需予想4800万トンに対し50万~100万トン下回る水準で着地する公算が大きい。中には、4700万トンを割り込むとの悲観的な見方もある。

とはいえ、需要が減少局面入りしたわけでない。来年度から東京オリンピック・パラリンピック開催前年の19年度まで4800万トン前後で推移するとの見通しが一般的だ。ただ、被災地や東京に需要が集中し、地域偏在が広がる懸念もある。