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2014年09月11日号

1:新たな契約形態模索 16年度から特需本格化~東京生コン協組

東京都心の生コン需要に復調の兆しがでてきた。東京地区生コンクリート協同組合(吉野友康理事長)の8月の生コン出荷量は、前年に比べ0・7%減とほぼ横ばい。総需要47万m3の「豊洲新市場」建設工事向けの出荷が盆明けから始まったためで、9月は、天候の影響を受けなければ8か月ぶりに前年実績を上回り、出荷が巡航速度へ回帰する転換点になりそうだ。都心の需要は、オリンピック施設工事など特需の本格化が見込まれる16年度頃から増加ペースが加速するというのが協組の見立て。同協組は、安定供給に万全を尽くすため、特需対策の検討を進めている。  昨年度の出荷は前年比1%減の310万2千m3と3年連続で減少した。当初計画比で約10万m3の下振れ。工事量は潤沢で、協組は1年半くらいの出荷に相当する契約残を常時抱えているものの、それに見合った数量が出ない。熟練工を含め建設業界の人手不足を主因とする現場工程遅延や工期の長期化が背景にある。 9月から巡航速度  2度の豪雪に見舞われた2月以降、出荷減退傾向が鮮明となり、6月まで2ケタ減が5か月続いた。7月は3・8%減と減少幅が小さくなり、8月は横ばい水準に戻った。これから4~8月のマイナス分を取り戻し、通期計画320万m3の確保が視野に入りそう。けん引役の豊洲新市場工事への納入期間は1年弱と短く、月換算で4万~5万m3の出荷が見込まれる。  ただ、全体の出荷は当面大きな伸びは期待できず、巡航速度で推移する公算だ。人手不足などボトルネックの影響も引き続き受ける。  吉野理事長は「五輪需要やインフラ需要が出てくるのは15年度終盤か16年度になるだろう」と、そのあたりを起点に19年度まで需要は一定規模まで膨らむとの見解を示す。  同協組は6月に特需対応検討ワーキングチームを立ち上げた。理事長直轄組織で、具体的には特需物件の洗い出し、生産・輸送能力と原材料の安定確保に関する調査、各物件への納入が重なる盛期の対応策を立案する。 輸送余力小さく  同チームの試算によると、生産能力(同協組展開分のみ)は、強度24N/mm2の普通コンクリートを全量製造した場合、年間1175万m3と直近の出荷実績の3・7倍。スランプフロー管理の60N/mm2の高強度コンクリートで同555万m3と試算した。  需要規模はまだ不確定だが、「生産能力は心配ないだろう。問題は輸送だ」(同)。輸送能力は、1日当たり平均1万3685m3(1台3回転)と試算。月22日稼働で年間360万m3強と生産能力に比べて余力は小さい。吉野理事長は、「出荷予定の変更が是正されればもう少し余力は増える」と指摘する。  様々な要因により予定変更が多発。毎月の変更率は出荷数量ベースで2~3割に上り輸送効率の低下を招いている。吉野理事長は「工場出荷担当者とデリバリー店との連携をより密にしないといけない」と指摘するとともに、是正を促すため、出荷予定キャンセル料金制度の適用日時の繰り上げを検討したいとの意向を示している。  輸送問題と並んで焦点になるのが骨材の安定確保。生産・輸送能力の低下で骨材需給がタイト化しやすい構造になっており、盛期には供給不安に陥る可能性もある。 コスト上昇続く  コストが一段と膨らむことを見越して、新たな契約形態の模索も始まった。同協組は6月からコスト転嫁を理由に販売価格を1000円引き上げたが、これまでの経験則ではその効果が出てくるのは半年から1年先。コスト転嫁できない契約残が8月末で560万m3に上り、組合員の収益を圧迫する恐れがある。  特需の本格化と相前後して、原材料価格や輸送コストの騰勢が強まるのは必至。工期も延びる傾向にあり、二重、三重のコスト負担を強いられる可能性もある。吉野理事長は理事会で新たな契約形態について検討を始めることを報告、執行部で議論が進められている。