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2013年11月28日号

1;中流動コンの採用拡大~NEXCOが標準化

トンネル覆工コンクリートを中心に中流動コンクリートを採用する事例が増えている。スランプフローが35~50cm程度と普通コンクリートと高流動コンクリートの中間の性質を持ったコンクリートで、軽微な締固めで均一に充填できる特徴がある。NEXCO3社(東日本、中日本、西日本)の高速道路のトンネル工事を中心に採用されている。

中流動コンクリートの技術開発はNEXCO3社の出資で設立された高速道路総合研究所(NEXCO総研)が確立した。2008年に、石炭灰や石粉などの粉体材料を用いて材料分離抵抗性を確保しつつ流動性に優れた中流動覆工コンクリートを「トンネル施工管理要領」に盛り込み、施工性の改善と品質向上につながる技術として高速道路トンネルなどに採用している。

粉体系材料を用いた中流動コンクリートは粉体材料の入手が困難な地域や専用設備のない生コン工場では対応できないという制約が課題となっていたが、増粘剤一液型高性能AE減水剤の登場でその制約が克服された。

増粘剤一液型高性能AE減水剤はもともと高流動コンクリートの製造に用いられており、国内の主要混和剤メーカー各社が製品化していた。10年にBASFジャパンが「スマートダイナミックコンクリート(SDC)」の国内展開を始めたことを契機に、ゼネコン各社で技術開発が進み、普通コンクリートとほぼ同様の手法で中流動コンクリートを製造する技術が確立された。

ゼネコン各社からの増粘剤系中流動コンクリートの技術提案を受けて、NEXCO総研は性能の確認に着手。スランプフロー試験、加振変形試験、U型充填性試験および最適エネルギー試験で粉体系中流動コンクリートと性能が同等であることを確認し、8月に改定した「トンネル施工管理要領」で粉体系と増粘剤系の中流動覆工コンクリートを標準化した。

ゼネコン各社の施工実績も増えている。大成建設は仙台市交通局発注の仙台地下鉄東西線西公園工区の青葉通トンネルに増粘剤系の中流動コンクリートを採用した。現場条件からポンプ圧送で最長水平換算距離585mのポンプ圧送となったが、増粘剤一体型高性能AE減水剤の採用と圧送距離に応じた配合の検討で品質を確保した。

大林組は「スムースクリート」の名称で増粘剤系中流動コンクリートを展開している。NEXCO、国交省発注のトンネル工事のほか、LNGタンクの防液堤や調節池などの水密構造物など12件で、合計10万m3の採用実績がある。