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2013年05月30日号

1:暑中コン対策マニュアル刊行~建築学会近畿支部

日本建築学会近畿支部は、「暑中コンクリート工事における対策マニュアル」を刊行した。荷卸し時のコンクリート温度が35度を超える場合に備え、具体的な対策をマニュアルとしてまとめたもので、ブリーフィング(事前協議)に基づく暑中対策の計画・準備、コンクリートの品質を確保するための要求項目を満たすことなどを条件に、温度上限を38度まで引き上げることを認めてもらう目的。同支部材料・施工部会と大阪広域生コンクリート協同組合が2009年から取り組む暑中コンクリート対策に関する検討の集大成だ。27日に大阪市内のホテルで同マニュアル報告会が開かれ、200人以上が参加した。
 日本建築学会のJASS5(鉄筋コンクリート工事標準仕様書)の暑中コンクリートの節では、荷卸し時のコンクリート温度は「原則として35度以下」と規定され、それを超える状況が見込まれる場合は、「コンクリートの品質低下を防止するための適切な措置を講じること」を求めている。
 気候変動などで暑中環境が厳しさを増す中で、同支部材料・施工部会と大阪広域協組は09年に暑中コンクリート対策検討委員会を設立し、膨大な実験を重ね、データを蓄積してきた。その結果を踏まえ昨年、マニュアル作成WGを設置、35度超対策を中心とするマニュアルがこのほど完成した。
 マニュアルは、暑中コンクリートに関する規定値の変遷、適用条件、ブリーフィング、コンクリート材料・調(配)合・製造・運搬時の暑中対策、施工および養生時の暑中対策など8章で構成されている。
 適用コンクリートは、建築工事で使用する設計基準強度36N/mm2以下で、普通ポルトランドセメントを使った普通コンクリートを対象としている。適用期間は、荷卸し時のコンクリート温度が35度を超える可能性が高い、日平均気温の平年値が27度を超える時期を原則とした。
 設計、監理、施工、生コン生産の4者によるブリーフィングを実施することをマニュアル適用の前提とし、材料や製造、運搬、施工などの対策を確認するチェックリストを明記した。荷卸し時のコンクリート温度を38度以下とする場合の適用条件として、①荷卸し時のコンクリート温度が35度を超えるような環境下でのスランプの経時変化やプロクター貫入抵抗値等のデータを有していること②遅延形の混和剤を使用していること③普通ポルトランドセメントを使用していること④単位セメント量は320kg以上、水セメント比は55%以下であること⑤スランプは18cm以上であること⑥混和剤の使用量が性能を満足させる量を確保していること⑦適切な施工管理が行われていることの7項目を設定した。
 特に、遅延形の高性能AE減水剤を使用したスランプ21cmのコンクリートの適用を「推奨」している。
 生コン工場における暑中対策では、材料、調合、製造、運搬各段階での温度対策とその効果を大~微の4段階で評価するとともに、対策の採用による懸案事項も示した。生コン工場で「日常的に実施できる温度対策では効果は小さい」ものの、対策を組み合わせて効果を高めることが重要としている。