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2012年11月08日号

1;戻りコン 経営の重荷に

 戻りコンクリート問題に改めて焦点があたっている。需要規模の縮小、コストアップなど生コン製造業者の収益に下押し圧力がかかる中で、戻りコン発生量はほとんど減らず、その処理・廃棄コストが経営の重荷になってきているためだ。処理有料化が有効な削減策と見られ、一部の地域で実行されているが、法的問題を伴うことから、全国的な広がりを欠いている。一方、有効利用の模索も続く。処理後のスラッジ水をより使いやすい形にするため、生コンJIS(A5308)が改められ、次回のJIS改正で「回収骨材」が盛り込まれる見通しとなった。さらに、特殊混和剤を使って戻りコンから骨材を造り出す技術が開発、実用化されている。
 現場の過剰発注、打設数量の計算ミス、生コン品質の不適合などが戻りコン発生要因とされている。その中でも、生コン製造業界が問題視しているのが現場側の不備で発生する戻りコンだ。
発生率最大10%
 生コン工場を対象に実施したコンクリート工業新聞のアンケート調査によると、出荷に占める戻りコンの割合(複数工場を保有する場合は1工場平均)は、1%未満から最大10%だった。
 処理・廃棄費用は100万~500万円の範囲が中心で、最高は2500万円。関東一区など大都市圏での発生割合が比較的高く、出荷数量が多い分、処理・廃棄費用も高額になっている。
処理有料化で減量
 生コン製造業界にとって戻りコン削減は数十年来の課題。これまで削減に向けた検討が行われ、対策に取り組まれてきたものの、実効を伴わないまま現在に至っている。
 決まって浮上するのが処理有料化。アンケートでも生コン工場は処理有料化が最も効果的な対策と考えている。「残コン代を請求したことで実際に減少している」と効果を指摘する声もあった。
 だが、法律の壁が立ちはだかる。戻りコンが廃棄物と認定された場合、廃掃法(廃棄物の処理及び清掃に関する法律)に抵触する可能性があることが、有料化に二の足を踏ませる主因になっている。自治体によって戻りコンに対する見解は一様でなく、現時点で有料化の動きが広がる状況になっていない。
 こうした中で一部の生コン協同組合が処理有料化を軸に、改めて対策検討を進めている。突破口を開けるかどうかその結果が注目される。
 戻りコン由来の廃棄物を、有効利用を含めいかに削減するかという問題も前進しているとは言い難い。JIS改正によってスラッジ水の練混ぜ水利用のハードルは以前より低くなったものの、購入者の理解は容易に得られず、実際に使っている工場は未だ一握りにとどまっている。
 一方、生コン製造業界では次のJIS改正で回収骨材の使用を盛り込むよう改正原案作成委員会に提案、概ね同意が得られたようだ。5%程度を回収骨材に置き換えられれば、廃棄骨材はなくなる計算で、一定の廃棄物削減効果が期待できそうだ。
 ただ、有効利用は事後の策であり、戻りコン発生をいかに抑制するかという本質的な問題の解にはならない。アンケートでは対策として、処理有料化のほか、「ゼネコンには環境保全の義務があることを強調すべき」、「現場の適切な計算に基づくオーダー量を心がけてもらいたい」、「予想数量より手前で止めて、その後に追加注文をしてもらう」などが提案されている。