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2012年09月20日号

1;重要地域で直系展開も~太平洋セメントの生コン政策

 太平洋セメントは、今年度スタートした3年間の中期経営計画(14中計)で、「生コン政策の推進・強化」を掲げている。生コン業界の安定化・健全化を支援することにより、国内セメント事業の収益向上や持続性を確保する目的。生コンは地域性の色濃い業態であることを踏まえ、地域事情に合った政策を描き、直系生コンや意識を共有できるユーザーなど様々なチャンネルを利用して直接的・間接的に支援する。また、拠点を持つ必要性の高い地域については、事業採算性を前提に、専業などの直系化や一部出資する準直系化を視野に入れる。(2面に関連記事)
 全国の8割方の生コン市場では、生コン協同組合が共販事業によって価格を支えている。協組共販は多くの市場で一定の成果をあげているものの、その一方で、員外社の販売攻勢や協組内部の足並みの乱れなどから行き詰まりが生じ、価格が急落するケースが後を絶たない。
 セメントの7割を消費する生コン業界の動静が、セメントメーカーの業績を左右する1つの大きな要因になっている。セメントと生コンの価格はかつてより連動性は薄れてきたとはいえ、生コン価格が低迷する地域ではセメントの値上げも容易に受入れられないのが現状だ。そのため、太平洋セメントは、生コン業界の安定化・健全化を「当社のビジネスにとって欠かせない要素」(上村清取締役専務執行役員・セメント事業本部長)と位置付け、生コン政策の推進・強化を14中計に盛り込んだ。
 生コン政策は各地域各様となる。地域性や抱える問題によって、アプローチの仕方や解決策が異なるため。工場統廃合事例や協組共販の運営事例など同社が蓄積してきた経験や情報の提供、人的支援、技術支援が基本的な政策メニューとなる。
 上村専務は、「需給バランスの適正化や品質の向上・保証など生コン業界の健全化に欠かせない問題についてユーザーと一緒になって考えるとともに、情報も提供したい。お互いがそれぞれの役割を認識し合い、ベクトルを共有することが、支援の前提となる。したがって、各地域の生コン業界の姿勢の度合いによって、当社の関わり方も変えざるを得ないだろう」と語る。
 生コン政策は、単に生コン協組の支援だけを念頭に置いたものではない。「協組という仕組みがなくても地域の安定を図ることは可能だと思う。例えば、合理化は協組でなくても、仲間内や近隣会社とやれる。それについても協力する用意がある」(同)。
 メーカー各社はこれまで、協組共販体制が崩壊した地域で大同団結を促すなど器作りに協力してきたが、太平洋セメントは、そうした役割に加えて、「健全な方向へ向かうユーザーに対し、技術支援など色々な角度から協力していく」(同)と、健全化過程でのサポート体制の充実を図る考え。
 また、生コン業界の安定化・健全化にとって直系生コンが必要な地域については、例えば、撤退する専業の直系化や、あるいは信頼できるユーザーとのパートナーシップを強めて準直系化することを検討する。「意地で直系生コンを抱えることはしない」(同)と、一定の需要規模で、事業採算性が見込める地域が対象になるもようだ。