文字サイズ(変更方法 文字サイズを大きく 文字サイズを小さく
2019年01月31日号

1;骨材供給に黄色信号~首都圏

首都圏では生コン需要の回復に伴って骨材需給が逼迫してきた。内陸部では昨年夏から埼玉の石灰石骨材業者が出荷制限を行うなど不足感が増していたが、東京湾に海送されている石灰石骨材も生コンの出荷増に物流体制が追い付かず、その影響が広がっている。東京オリンピック・パラリンピック関連工事や都心部の再開発など旺盛な需要が続く中で、骨材供給に黄色信号が灯っている。
今年度4~12月の関東一区主要生コン10協同組合の出荷量は前年同期比12・2%増(90万m3)の857万8千万m3となった。これに伴って骨材需要も増えている。首都圏に海送されている石灰石骨材の最大供給会社である太平洋セメントは今年度、主力産地の峩朗鉱山(北海道)の石灰石骨材を130万トンを供給する計画だったが、納入先である生コン工場の出荷が想定を上回る勢いで、足元では当初想定を大きく上回る150万トンペースとなっている。
峩朗鉱山では今回の出荷増に対応する生産能力は十分に有しているが、問題は物流だ。
同社では通常、上磯工場の出荷桟橋から石灰石専用船(1万~2万トン)や傭船で関東方面の各置き場まで骨材を運搬している。今回の出荷増を受けて、これまで東北の被災地向けに骨材を出荷してきた函館港の北埠頭からも関東方面の各置き場への海送を開始した。上磯工場の出荷桟橋では2万トン級の船舶が接岸できるが、北埠頭に入港できる船舶は最大でも2千トン級。かつ出荷形態も峩朗鉱山から出荷桟橋まではベルトコンベアが使えるが、北埠頭まではダンプでの陸送が必要になる。こうした陸上輸送のコスト負担は大きくなるものの、同社は「ユーザーに迷惑をかけないよう、骨材の安定供給に最善を尽くす」方針だ。また、直系生コン会社のうち、現在峩朗鉱山の石灰石骨材を使用している晴海小野田レミコンとアサノコンクリートでは、新津久見鉱山(大分県)の石灰石骨材も使用できるようJISの標準化手続きも進めている。
在庫が不足
しかし、昨年末には荒天による接岸の遅れなどもあり、東京湾物流骨材ヤードの在庫が最大貯蔵能力(20万トン)の1%程度まで落ち込む日もあった。年末年始の生コン休業期間中にも船舶をフル稼働させ在庫を積み増したが、在庫は異例とも言える低水準で推移している。同社は「峩朗鉱山の石灰石骨材の積み込みや積み出しでは、時化などの悪天候により港に船舶が接岸できない日がある。そうした影響を考慮すると、峩朗鉱山からの供給は140万トン/年程度」と語る。
太平洋セメントは、昨年末に今年1月から峩朗鉱山の石灰石骨材の供給に上限値を定める可能性があることをユーザーに通知し、東京地区生コン協組に対しては石灰石骨材の需給環境と今後の供給計画について説明した。
供給量の上限値設定を実際に行使するかの判断は、3月末時点の骨材ヤードの在庫状況次第となっている。4月に上磯工場の出荷桟橋の定期点検を計画しており、3月末までに骨材ヤードに約1か月分の出荷量にあたる約8万トンまで在庫を積み増せるかにかかっている。同社では定期点検中の傭船の確保や函館港北埠頭からの出荷を増やすことで骨材ヤードの在庫を積み増すことを計画している。
これから先、首都圏湾岸部の生コン工場や石灰石骨材業者にも影響は拡大していく可能性がある。生コン協組が、骨材の調達が難しくなりそうな生コン工場から他工場に出荷を振り向けていくことが想定されるためだ。ただ、東京湾岸で石灰石骨材を販売する他社でも、出荷増により在庫が平年の水準を下回っており、「他人事とは思えない」(石灰石メーカー)と警戒する。工事が増える年度末を前に、これから首都圏の骨材需給は陸送、海送ともより一層厳しくなりそうだ。