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2018年02月22日号

1;首都圏で生コン輸送費上昇

首都圏の生コン輸送コストが膨らんでいる。燃料費の上昇や積載規制強化への対応、昨年7月から日雇労働求職者給付金制度の運用が厳格化されたことが契機となり、新運転など労協労連から派遣されている日々雇用の運転手だけでなく、生コン工場(輸送会社)で直接雇用している運転手の待遇改善が避けられず、これが輸送コストの上昇という形で表面化してきた。また、運転手が確保できずに繁忙期でも動かせないコンクリートミキサ車が増えている。
首都圏の生コン業界では、悪天候などで工事が中止になるリスクに備えて、古くから日々雇用の運転手を活用してきた。また運転手にとってもミキサ車などの資産を持たずに労働の対価が得られるため、労使ともにメリットのある制度となっている。
こうした中、厚生労働省は日雇給付金の不正受給防止に向け、雇用保険法の「直近2か月で各月とも18日以上同一事業主に雇用された場合」、あるいは「6か月連続して同一の事業所のみに就労している場合」には、一般的な厚生年金や健康保険に切り替えるよう指導するようになった。
この影響を直接受けたのが日雇い労働者の労務費だ。今回の雇用保険法の改正に合わせて、労協労連が7月から使用者側に基本料金(1日当たり1万7200円/人、新運転HPより)の値取り徹底を通知。これにより、生コン輸送会社(工場)が日々雇用の運転手を雇う際のコストは最大で10%程度上昇した。
コストの上昇要因はこれだけに止まらない。労協労連の運転手との不公平感が出ないよう自社の運転手の給与を引き上げた会社が多かったほか、労協労連からの派遣運転手を直接雇用に切り替えた会社もあった。都心では2020年の東京オリンピック・パラリンピックの施設工事や大規模再開発工事が本格化しており「安定供給を最優先に考えると、日々雇用の運転手を囲い込むしか方法がなかった」(輸送会社)。また、昨今は関東一円だけでなく、北海道など遠方から運転手とミキサ車を確保する工場もある。この場合、回送費や宿舎代が上乗せされるため、こうした費用も輸送コストの上昇に拍車をかけている。
今年4月以降はさらに輸送コストが上昇しそうだ。生コン工場と直接資本関係のないリース会社が4月から傭車料金の引き上げを求めている。リース会社は繁忙期にミキサ車を確保するソースとして機能している。最も生コン出荷の波を受けやすい業態だ。そのリース会社もこの数年間、仕事が少なかったため、ミキサ車の減車を進め、運転手も他の業種に活用するなど、生コン専門の運転手は少なくなっている。
生コン輸送の運転手は元々、高齢化が進んでいるうえ、昨今は物流大手の宅配業者が取り組んでいる待遇改善などで、異業種への転職なども増加。転職準備金を用意する会社もあり、物流業界全体で大型免許を保有する人材の争奪戦の様相だ。
今後の人材確保について、生コン輸送会社は「出荷に波がある生コン産業では、運転手がその調整弁となってきた。今回はそのしわ寄せが一気に噴出した感がある。最終的には生コン産業が人材を確保し、育成していくことが望まれる。異業種からも魅力的な業界と思われるようにならないと運転手は確保できない」と語っている。