文字サイズ(変更方法 文字サイズを大きく 文字サイズを小さく
2018年02月08日号

1;セメント値上げそろう

セメントの値上げが出そろった。日鉄住金高炉セメントが先月26日、日鉄住金セメントが同31日、製造、物流コストの上昇を理由に販売価格の引き上げを表明した。今年度末にかけて生コンなど需要家との交渉が全国各地で本格化する。ただ、生コン製造業界は総じて様子見の姿勢で、現時点でそれを理由にした生コン値上げの動きは限定的だ。
日鉄住金高炉セメントは、諸資材の調達費用の増加や海上輸送コスト、設備修繕コストの上昇を理由に挙げている。上げ幅は一律ではなく、取引先との現行価格を基準に個別に設定する。2月中頃から取引先に値上げを申し入れ、「4月以降、順次改定の契約を締結することを目指す」方針だ。
日鉄住金セメントは石炭・石油価格や燃料価格の高騰、人手不足を背景とする諸々のコストを売価に転嫁する。同社は「引き続き自助努力を推進するが、製品の安定供給と事業継続のためには適正な利益確保が必要」としている。
太平洋セメントが先導して始まった値上げの流れは全社に広がった。2013年以来のそろい踏みとなる。上げ幅は一部を除き1000円、あるいは1000円以上で、4月1日以降の出荷分から適用する。メーカー各社は諸々のコストは上昇トレンドがなお続き、収益を下押しするとして値上げ浸透に強い意気込みを示す。前回の値上げは有額回答を得られるまでかなりの時間がかかったが、今回は一定の期間で交渉を仕上げたい考えだ。
セメント需要の減少は底を打ち、その7割を消費する生コン製造業界の業況改善など値上げの環境はおおむね整った。「値上げ姿勢は強い」(首都圏の生コン会社)と見る向きも少なくない。ただ、現時点でセメント値上げを受けて、生コン値上げを打ち出した協同組合はほとんどない。交渉はこれから佳境を迎えることから、その行方を見極めたうえで、生コンの販売価格に転嫁するかどうか判断したいとの声が目立つ。