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2017年08月31日号

1;戻りコン処理を文書化~北海道

北海道で残コン・戻りコン問題の解決につながる廃棄物の処理及び清掃に関する法律(廃掃法)上の新たな考え方が示された。北海道生コンクリート工業組合(成田眞一理事長)は北海道環境生活部環境局循環型社会推進課と残コン・戻りコンの取り扱いに関する協議を進め、「建設現場における生コンの引き渡しルール」を文書化。これにより、生コンの所有権は「型枠に生コンを打設した時点」で移転することを明確にした。

同工組は今春、残コン・戻りコン問題を考える際に懸案となっていた所有権の考え方を明確にする検討に着手。生コンは一般の工業製品とは異なり、受注生産が基本であることから、その所有権は「発注者が用意した型枠に流し込んで引き渡しが完了した時点で移転する」との考え方を導き出した。2016年4月に行われた同課との協議で、「生コンの所有権は引き渡した段階で発注者に移転すると考えることができ、売買契約などで引き渡しに関する合意が成立していれば問題はない」との回答を得た。

その後、同課が新たな考え方を北海道内の総合振興局・振興局に通達したこと受け、同工組は生コンの引き渡しルールの文書化に着手。関係団体である日本建設業連合会、北海道建設業協会、北海道コンクリート圧送協同組合とも意見交換を行い、導き出した考え方を建設業界の共通認識としたうえで生コンの廃掃法上の取り扱いを明確にする確認書を道庁と取り交わした。

確認書では①建設現場において、型枠に流し込まれた生コンは、生コン工場から引き渡され所有権が移転した生コンとなる、②①以外の生コンのうち、現場で回収可能な生コンは生コン工場が持ち帰ることを基本とし、現場で回収されない生コンが発生した場合は、発注者に所有権が移転する、③引き渡されなかった生コンは、工場に持ち帰り後、処分を行うため、持ち帰る段階では廃棄物ではない。従って、運搬車両に廃掃法に基づく「産業廃棄物運搬車」の表示は行わない――の3項目が示された。

確認書に「回収可能な生コン」と明記することで、ポンプ車由来の洗浄排水などの持ち帰りが常態化する懸念は払しょくされた。回収されない生コンの所有権は発注者に移るため、型枠に入らなかった生コンを全て生コン工場で責任処理する必要がなくなった。また、所有権の分岐点が「型枠に流し込んだ時点」と明文化されたことで、型枠に打ち込まれずにポンプ車に残った生コンの所有権は生コン工場にあり、持ち帰って処理しても廃掃法に違反しないとの判断が明確になった。

8月9日、関係団体を代表して同工組の成田理事長が同課を訪問し合意内容を説明、同課から「確認書が売買契約上の所有権の取り決めとみなすことができ、個別に所有権の取り決めを交わす必要はない」との判断を得た。

成田理事長は「東京地区協組を始めとした先進的な取り組みが礎となり、ようやく残コン・戻りコン問題の解決に向けた新たな道筋ができた。大変感謝している」と語る。

同工組では今後、資源の無駄遣いを抑制するため、戻りコンの有償化を検討する方針だ。