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2017年02月02日号

1;スランプ12cm標準に~生産性向上委

「土木工事で標準的に採用されているコンクリートのスランプを8cmから12cmに引き上げることでコンクリート工の省力化を図り、生産性向上を実現する」。国土交通省のコンクリート生産性向上検討協議会(前川宏一会長)傘下の「流動性を高めたコンクリートの普及検討委員会」(橋本親典委員長=徳島大学大学院教授)が、3月末をメドに成果をまとめてスランプを見直すガイドラインを作成する。

国土交通省が推進するi―Construction(アイコンストラクション)ではコンクリート工の生産性向上策として、中・高流動コンクリートの活用が掲げられている。それを受けて、昨年4月に検討委員会が発足し、中・高流動コンクリートの活用を検討してきたが、「技術的に高度過ぎて全国の一般的な生コン工場で出荷対応するのは難しい。生コン工場での品質管理に要する経費も必要となる。さらに、打込み時にかかる圧力を考えると剛性の高い型枠の検討も必要で、施工性は向上しても生産性向上にはつながらない」(橋本委員長)として、標準的な生コンのスランプを大きくするというアプローチで生産性向上を図る方向にシフトした。

同検討委員会は設計コンサルタントやゼネコン、土木研究所、国土交通省技術調査課らでメンバーを構成している。これまでに、スランプ8cm及び12cmの現場データを収集して、生産性やコストの比較検証を行った。その結果、スランプ12cmとしても大幅なコストアップにはならずに工事の生産性を20%程度向上できると試算。スランプ12cmを標準に、施工条件に応じて適切なスランプを選定する考え方をガイドラインで明確に示す。

コンクリートの品質は単位水量及び水セメント比の上限値を厳守することで確保する。橋本委員長は「スランプはあくまで参考値で、単位水量を増加させなくても、混和材の使用や混和剤の添加量でスランプの調整ができる。打込み場所や打込み高さ、配筋量、鉄筋のかぶり厚さ・空きに応じてスランプを自由に設定できることをガイドラインで明示する」と話す。

ガイドラインでは、スランプを12cmに引き上げることのメリットも示す。作業員1人当たりの工事量が増えて、現場作業員の大幅な省力化が可能となるほか、ポンプ圧送性の向上による閉塞リスクの低減やバイブレータによる締固め作業が容易になることで施工時の不具合抑制にもつながる。また、標準とするスランプが引き上げられることで、副次的効果として生コン工場へのスランプの上限要求解消も期待される。

中・高流動コンクリートについては先進的な技術として章を設ける。スランプ12cm以上の高スランプのコンクリートにしても打込みが困難な部位については、土木学会コンクリートライブラリー「高流動コンクリートの配合設計・施工指針」などを参照して対応する方向性を示す方針だ。

橋本委員長は「ガイドラインではスランプを8cmから12cmに引き上げる意図や経緯を明記する。ガイドラインで生産性向上に向けた具体策を提示したい」としている。