1;復興支えるセメントに~熊本地震の災害廃棄物
熊本地震で発生した災害廃棄物がセメントに生まれ変わり、被災地復旧・復興の礎となる――。太平洋セメントの八代SS(熊本県八代市)に10月31日、グループ会社の明星セメント(新潟県糸魚川市)が災害廃棄物を使って製造したセメントを積んだ第1船が到着した。
熊本県は、熊本地震で出る災害廃棄物が約200万トンに上ると推定、これを2年以内に処理する方針を掲げている。環境省が昨秋立ち上げ、メンバーとしてセメント協会も名を連ねる災害廃棄物処理支援ネットワークなどからの要請を受けて、セメントメーカー各社は夏頃から災害廃棄物の受け入れを始めている。
中でも太平洋セメントグループは最大で、7月4日から11月初めまでに被災住宅などの解体で出た木くずや廃畳を約1万1千トン受け入れた。東日本大震災で災害廃棄物約100万トンを大船渡工場(岩手県大船渡市)で処理した実績や経験も評価されたようだ。
木くずや廃畳は、益城町から処理委託を受けた地元産業廃棄物リサイクル会社の津田が収集し、破砕機でチップ化したものを受け入れている。
1万1千トンのうち、約9000トンを明星セメントが主にバイオマス発電の燃料として処理し、その焼却灰をセメントの粘土代替としてリサイクルした。残り2000トンは直営の大分工場(大分県津久見市)がセメント焼成用燃料として処理した。
上期末までに明星セメントは月3000トン、大分工場は月1500トンをそれぞれ処理できる体制を整え、10月から本格的に受け入れている。復旧・復興の加速化を支援するため、ほかの工場で受け入ることも視野に入れる。さらに、処理対象に混合汚泥や廃プラスチックを加えることも検討中だ。
八代で固化材製造
第1船で3000トンを届けた。復旧・復興工事の進展に伴って明星セメントからの供給量も順次増やす計画だ。
被災地では今後、国道57号、国道325号といった幹線道路の復旧や土砂崩れで崩落した阿蘇大橋の架け替え、住宅の再建などが本格化する。セメント協会によると、震災復興に伴うセメント需要は3年で150万トンと推定されている。太平洋セメントは災害廃棄物処理とセメント供給の両面から復旧・復興を後押しする。その一環として来年3月の稼働を目指し、八代SSに固化材製造設備を新設中だ。
太平洋セメントの中野幸正九州支店長は「当社は復旧・復興を支援するため、八代SSを拠点にセメントやセメント系固化材を安定供給していく。被災された方々や不自由な生活をされている方々が活気ある生活を取り戻され、災害に強い街づくりを通じて安心して暮らせるよう尽力したい」と語っている。