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2016年08月25日号

1;低炭素型コンクリートじわり普及

低炭素型コンクリートがじわじわ普及している。関東一区では都内を中心に比較的まとまった数量が出ているもよう。採用予定の物件も散見され、その市場は「間違いなく広がっていく」(都内の生コン大手)との見方が支配的だ。共販の枠組みの中に低炭素型コンクリートをどう位置づけるかが1つの課題となっている。東京地区生コンクリート協同組合は低炭素型コンクリートを「特殊品」と位置付け、物件単位に価格を決定する仕組みを取り入れた。

低炭素型コンクリートは、セメントの過半を高炉スラグ微粉末やフライアッシュなどの混和材料に置き換えたコンクリートの総称。セメントの使用量を減らすことで、クリンカ製造由来の二酸化炭素(CO2)の排出量を削減するというのが共通のコンセプトだ。

大林組は「クリーンクリート」、大成建設は「環境配慮コンクリート」などゼネコン各社が開発、実用化している。主な用途は建築基礎。土木研究所は2月に「低炭素型セメント結合材を用いたコンクリート構造物の設計・施工ガイドライン(案)」を公表、低炭素型コンクリートの利用拡大を後押ししている。

市場切取る公算

生コン工場は低炭素型コンクリートを必ずしも歓迎しているわけではない。設備に余裕がない中で、注文が入ると、サイロや貯蔵ビンの中身を入れ替えたりする煩雑な作業が伴うためだ。加えてゼネコンごとに低炭素型コンクリートの仕様が異なることも厄介視される要因となっている。

とはいえ、低炭素型コンクリートは一種のブーム。下火になるどころか、大都市圏においては一定の市場を切り取る公算が大きい。その将来性をにらみ、首都圏の生コン工場はこぞって製造対応を進めている。

神奈川は一律加算

生コン協組も販売対応に動いている。東京地区協組は以前からシリカフュームセメントなどスライド表に記載されていないセメント品種を使ったコンクリートを「特殊品」と位置付けて、「全て配合内容を計算」して価格を決めている。特殊品の範囲を混和材料を使ったコンクリートにも拡大し、7月1日から適用を始めている。複数工場から同じ物件に低炭素型コンクリートを納入する場合、出荷工場によって価格が変わることもあるという。

神奈川生コン協組は低炭素型コンクリートの価格について、ベース(18・18・20)価格と指定配合のスライド価格に、一律4000円を加算することを決めた。

セメントも注視

一方、セメントメーカー各社も低炭素型コンクリートの広がりを注視している。これが普及し始めると、クリンカの生産減少に直結し、廃棄物の引取りも制限されるとの懸念があるためだ。「セメント需要を減らすことに協力する必要はない」(セメント大手幹部)とのムードが一時的に広がったものの、最近では「時代の流れ。対応せざるを得ない」、「無視できない存在」などといった声も目立つ。

ただ、低炭素型コンクリートにどう向き合うか方針はまだ明確に定まってない。一部のメーカーからは「セメントに関係ない人がセメントや高炉スラグ微粉末を仕入れて低炭素型のセメントとして売る可能性は否定できない。それを回避するためにむしろ積極的に取込むべきかもしれない」との指摘もある。