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2016年08月10日号

1;高・中流動コン、建築で拡大の動き

建築物件でも高・中流動コンクリートの採用が広がりそうだ。首都圏では生コンJIS(A5308)の呼び強度45までの普通強度領域(01区分)で、生コン工場とゼネコンが高・中流動コンの大臣認定を共同で取得する動きが進んでいる。

従来からフライアッシュ(FA)や砕石の石粉などの粉体を用いた高・中流動コンクリートはあったが、増粘剤一液型の高性能AE減水剤の登場で環境が一変。2013年にNEXCO3社(東日本、中日本、西日本)がトンネル覆工向けの中流動コンクリートを標準化したことで、土木分野で先行的に採用が進んだ。都内でも高速道路などで地下トンネルの建設が進んでおり、複雑な形状となるランプ部やJCT、鉄筋量の多い部分などで多く採用されている。
一方、建築分野においては、粉体量が多い富配合の高強度コンクリートとセットで展開されている。普通強度領域の高・中流動を用いる場合、大臣認定を取得する必要がある。これまでもコンクリート充填鋼管構造(CFT)や長距離圧送が必要になる超高層ビルの上層部のスラブなどでは、強度の高さではなく、流動性を確保する目的で高強度コンクリートが採用されてきた。これらを普通強度領域の高・中流動に代替することが検討されている。

大手ゼネコンと共同で、普通強度領域の高・中流動の大臣認定を取得している都内の生コン工場では「物件が決まらない段階で先行的に取得した」という。大臣認定を現在申請している別の生コン工場では「物件が決まってから申請したが、これから高・中流動コンの物件が増えてくるようなら工場単独での申請も検討する」と話す。19年に改正予定の生コンJISでも01区分にフロー管理を導入することが検討されているが、大臣認定を取得することでこれに先行するねらいがある。
大臣認定では、中流動としてスランプ23cm、高流動としてはフロー管理の50、55、60cmで取得するケースが多い。中流動をスランプ管理にする理由は許容差の問題。フローの45cmで管理すると、50cmと同じ±7・5cmの許容値が設定されるが、スランプ23cmだと±1・5または2cmとなり、「生コン工場で管理しやすくなる」(都内の生コン工場)ためだ。

生コン工場では、高・中流動コンの採用が進めばスランプの上限要求が緩和されるとの期待が強い。スランプの上限要求は「JISの管理幅を狭めているだけ」(同)だが、ゼネコンもスランプ23cm、フロー管理の生コンが選択肢に加わればこれらを選択できるようになる可能性がある。ただ01区分の生コンに比べ価格は高くなるが、「高・中流動の採用で締固めに要する人員を減らせる点や工期短縮効果で、どこまで相殺できるか」(同)が普及のカギとなりそうだ。