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2016年06月23日号

1;新たな技術課題浮上~生コン

生コン工場の経営において、大きな影響を及ぼしそうな技術課題が昨年来相次いで浮上している。国土交通省が提唱するi―Construction(アイコンストラクション)に端を発した高・中流動コンクリートの採用拡大、建築基準法整備促進事業(基整促)で提唱された大臣認定制度の見直し、生コンJIS(A5308)の03区分(高強度コンクリート)の積極的な利用の3つで、今後生コン工場では対応を迫られそうだ。

最も早く影響が出そうなのが大臣認定制度の見直しだ。昨年発生した免震ゴムの性能偽装問題を受け、基整促は、免震材料以外の材料の大臣認定も今後は実地検査を行うべきとの方針を示した。従来は書類審査のみで定期的な維持審査はなかった。生コンについては荷卸し時に製品検査が行われているが、過去の仕様違い事案で「荷卸し時に判別できなかった」とし、実地検査を行う対象とした。免震ゴムの場合、データ偽装が発覚したのは昨年2月で、実地検査は12月から行われている。コンクリートの大臣認定についても早ければ年度内にも免震ゴムと同様の実地検査が開始される可能性がある。

i―Conにおける高・中流動コンの採用拡大も挙げられる。3月に設置されたコンクリート生産性向上検討協議会では、高・中流動コンだけでなく、鉄筋のプレハブ化や大型プレキャスト化の推進なども検討されている。技術的課題をクリアしたものから、土木構造物設計ガイドラインに盛り込み、2018年度には設計手法手引き(仮称)を発刊する計画だ。

昨年度の建設工事受注動態統計によると、公共機関が発注する工事の62%を土木工事が占める。都市部ではこれまで建築向けの高強度コンクリートの製造時にスランプフロー管理を行うケースが多かったが、今後は郡部でも01区分(普通強度領域)でスランプフロー管理を行う生コンが求められることが予想される。コンクリート生産性向上検討協議会では、生コンJISの普通強度領域にスランプフロー管理を盛り込むことが提案された。これは19年に予定されている生コンJIS改正の検討課題の一つにも挙げられている。

最後は、高強度領域の生コンJISの積極的な利用だ。高強度領域のJISは03年に制定されたが、ゼネコンは今も強度幅の刻みに自由度がある大臣認定品を使用するケースがほとんど。特に高強度コンの出荷比率が高い首都圏では、多くの生コン工場が単独で大臣認定を取得し、需要に対応している。

ただ、維持審査のなかった大臣認定に実地検査が行われるようになると、複数の大臣認定を保有する生コン工場の負担は大きくなる。維持審査を行う側の負担もあることから、次の生コンJIS改正で高強度領域の利用拡大を目指すことになった。影響が出てくるのは早くても19年度以降だが、実地検査導入後に高強度JISの利用拡大が進むか見極める必要がありそうだ。