1;現場打ち工程見直し~国交省
国土交通省は3日、コンクリート生産性向上検討協議会(会長・前川宏一東京大学教授)を設立し、省内で初会合を開いた。国交省は昨年11月に魅力ある建設産業の創出を目指す「i―Construction(アイ・コンストラクション)」を提唱。コンクリート工における生産性向上を進める方針が盛り込まれた。これを受けて同協議会を設立し、コンクリート工事における工程を見直し、新技術の活用やプレキャスト化で生産性の向上、工期短縮を目指す。現場打ちの省力化に関して、高流動(中流動)コンクリートの利用拡大が提案された。協議会では今後、課題や取り組み方針、全体最適化に向けた規格の標準化、設計手法のあり方などを検討する。
コンクリート工は他の工種に比べ生産性向上が遅れていると指摘されている。現在のコンクリート工では鉄筋を組み立ててから型枠を設置し、生コンを打設した後、脱型する工程が組まれているが、同協議会ではその工程を全面的に見直して、生産性の向上を目指す。
現場打ちの生産性向上策として、鉄筋のプレハブ化とプレキャスト型枠を用いた埋設型枠工法の導入、継手の見直しなどが検討されている。これにより、鉄筋の組立てや型枠の脱型という工程を省略する。生コンの打設方法についても高流動(中流動)コンクリートや連続打設工法(スリップフォーム工法など)を採用することで工期短縮を目指す。
流動性の高いコンクリートについては、混和剤協会から高性能AE減水剤(増粘剤一液タイプ)を用いたコンクリートが紹介された。同協会は経済産業省の「高機能JIS開発」の一環で、経済的な高流動(中流動)コンクリートの開発を目指している。将来的には生コンJIS(A5308)の高強度領域におけるスランプフロー管理を、普通コンクリートにも適用できるようにしていく計画だ。
また、カルバート工など現場打ちの一部はプレキャスト製品への置き換え、工期短縮を図る。輸送できない大型製品は分割化して現場で組み立てる。
一方、コンクリート工の生産性向上策を実施する際に、性能規定を示したものがない点や、どのような施工条件・部材で適用できるかが明示されていないという課題がある。そこで、1996年に作成された「土木構造物設計ガイドライン」に様々な技術の性能規定や適用範囲を盛り込んで、17年度末までに改定する。規格(サイズ、仕様)の標準化やコスト以外の効果を評価する手法などをまとめた設計手法手引き(仮称)を18年度末までに策定する方針を示した。
会合の冒頭で池内幸司技監は、「これまで現場ごとの一品生産が原則だったが、規格を標準化してプレハブ化、プレキャスト化を進め、全体として効率を上げたい」と述べた。また、前川会長はオランダで行われているプレキャスト化による橋梁工事、中国のスリップフォーム工法などによる工期短縮の事例をあげ、「限定的だが、大幅な効率化は可能。知恵を集めて、仕組みや品質保証の体制を提案したい」と述べた。
同協議会は今後、年度内に2回目の会議を開き、来年度以降は年2~3回会合を開く予定。技術的な課題をクリアしたものから順次、ガイドライン・マニュアルに盛り込んでいくとしている。