1;混和材利用が進展~フライアッシュ
フライアッシュ(FA)をコンクリート用混和材として使う動きが加速している。東日本大震災後、石炭火力発電所や民間の自家発電などから発生する石炭灰が増えているためだ。FAを積極的に使用する自治体も出てきており、2010年度に秋田県の能代山本地域、15年度に長崎県が県発注工事でFAを使用した生コンを標準化している。こうした中、フライアッシュを改質し、生コンやコンクリート製品会社で使いやすくする試みも進められている。
石炭エネルギーセンターによると、石炭灰の発生量は、リーマンショック後に一旦落ち込んだものの、震災翌年の12年度には前年比約9%(108万トン)増の1266万トン、13年度も1289万トンと増えている。発生量が増える中、石炭灰の利用先の約65%を占めるセメント原料向けもセメント需要が頭打ちで、引取りに制約が出ている。そこでFAをコンクリート用混和材として使用する地域が広がっている。
10年度からFAコンクリートを標準化している秋田の能代山本地域では、80年代から生コン業者がFAをセメント代替(内割)として使用できるよう設備投資を進めてきた。04年に能代山本生コン協組が組合員の配合を統一したことを契機に、FAの供給元である東北電力らと仕様書への記載を県に陳情。この結果、同地域で4~10月に打設される県発注工事は、全てFAコンとなった。長崎も03年度からFA利用の検討を開始。当初は細骨材代替(外割)として検討されていたが、その過程で生産者側にとってメリットの高い内割での利用に転換。官民の検討会を経て、長崎県は15年に「フライアッシュコンクリート利用指針」を定めた。
FAのコンクリート利用が進む中、高品質なフライアッシュで市場を開拓しようとする動きがある。大分大学発のベンチャー企業、ゼロテクノ(大分市)が高品質フライアッシュ(CfFA)を展開している。火力発電所で発生するFAを再燃焼させ、コンクリートの空気連行性を阻害する未燃カーボン(強熱減量)を1%以下に改質したもの。日本製紙は昨年末、同社石巻工場(宮城県石巻市)にCfFAの生産設備を竣工した。大分、愛媛、沖縄に続く、4か所目のCfFAの生産拠点。今月から試験生産を開始し、4月からCfFAの販売を本格化させる。
日本製紙は販売窓口として、東北大学の久田真教授、CfFA開発者の大分大学の佐藤嘉昭教授、ゼロテクノと日本製紙ゼロテクノ東北有限責任事業組合(LLP)を設立。また、昨年10月にはプレキャストコンクリート製品会社らと研究会を立ち上げ、CfFAの共同開発を進める。製造設備の竣工を受け、今後東北の生コン、コンクリート製品向けに試料を提供する。今回竣工した設備は年産1万トンだが、日本製紙は「近い将来、年産3万トン体制にしたい」との目標を掲げている。