1;生コン、需要環境が悪化
2015年の生コン出荷は震災復興工事の加速化、東京オリンピック・パラリンピック特需や消費増税の反動減からの回復などで「下期から需要が膨らむ」という大きな期待感でスタートした。しかし、その期待に反して出荷は低迷。職人不足や入札不調などによる着工遅れ、公共工事の縮小、全国各地での災害復旧工事が相次いで終わったことも影響した。来年の需要環境についても悲観的な見方が広がっている。一部では協組脱退や新設などの問題が顕在化している。
11年の東日本大震災以後、セメント・生コン需要は増加に転じた。昨年度は消費増税による民需低迷で減少に転じたものの、今年度は東京五輪や震災復興、リニア中央新幹線などの大規模プロジェクトの着工が控えていることもあり、年初には「秋口から需要は回復する」との見方が大勢を占めていた。
ところが、出荷をけん引すると期待された首都圏の大型工事は着工が遅れ、全国で行われていた復旧工事も終息。東北も太平洋沿岸部で復興工事が進み始めたものの、内陸部の需要の落ち込みが出荷の底上げ効果を減殺した。これにより生コン出荷量は昨年10月から13か月連続で前年を下回っている。
全生連は今年度の生コン出荷を前年比8%減の8669万m3と9000万m3割れを見込む。足元の出荷が弱まる中で、来年の出荷見通しも堅く見積もる地域が多くなっている。
来年も特需頼みとなりそうだ。建設経済研究所が10月発表した建設投資見通しによると、来年度の建設投資額は今年度見込みに比べ1・9%減の48億7400億円。民間は増加するものの、政府投資は19兆2600億円と、被災地を除けば09年の民主党政権時とほぼ同じレベルまで落ち込む見通しだ。
地域的に見れば、首都圏は五輪特需、被災地では復興需要、中京圏も名古屋駅前の再開発工事がある。特に首都圏の五輪関連工事は、20年夏までの完成が必達目標である。設計、費用面の問題で着工が大幅に遅れた新国立競技場も来年早々にも着工される見通しだ。
集約再検討課題に
特需がない地域では、工場集約化の再検討が課題に浮上しそうだ。ただ、郡部では供給エリアを維持する関係上、集約化が難しい地域もある。工場の維持を前提にした協業化などの方策も検討する必要がある。また、一部では協組脱退や新設などの不安定要因も散見される。協組共販における諸問題は、これまでの需要回復で覆い隠されていたが、出荷減で再びこれらの問題が顕在化しつつある。来年は、協組の組織力が試される1年となる。