1;混和材利用拡大へ~JCI
高炉スラグや石炭灰(FA)を大量使用したコンクリートの利用拡大に向けた動きが活発化している。国内ではゼネコン各社が高炉セメントC種相当(置換率60~70%)の環境配慮型コンクリートを実用化し、実工事での採用も進んでいる。建築分野では日本建築学会が改訂を進めている「高炉スラグ微粉末・高炉セメントを使用するコンクリートの調合設計・施工指針」に高炉セメントC種相当のコンクリートを盛り込むことを検討する動きも出てきた。
環境配慮型コンクリートは、海外展開も模索されており、日本コンクリート工学会(JCI)は海外での利用状況や関連規格・基準類における混和材の取扱いなどをまとめ、15日に開いた報告会で公表した。JCIでは高炉スラグやFAを大量使用したコンクリートを国内外で広く普及することを目指して、2013年に「混和材を大量使用したコンクリートのアジア地域における有効利用に関する研究委員会」(野口貴文委員長=東京大学大学院教授)を設置。委員会は海外調査WGと大量使用WGからなり、海外調査WGは混和材を大量使用したコンクリートを普及するにあたっての基準・規準の課題を抽出し、解決策を探った。大量使用WGは技術の現状と施工事例を整理するとともに、アジアコンクリート連盟(ACF)加盟国から高炉スラグ微粉末、FA及びセメントを取り寄せて品質の違いとコンクリートとした時のフレッシュ特性・硬化特性への影響に関する実験を行った。
海外調査WGのまとめでは、東南アジアではタイがFAを大量使用したコンクリートを標準化することで国内産出量の約80%を有効利用している。また、カナダやインドネシアでは仕様規定型と性能規定型のコンクリートの発注方式を採っており、混和材を大量使用したコンクリートが使いやすい。
報告書では、コンクリート構造物の要求性能を明確に定義し、性能規定型の配(調)合設計法で混和材の種類や置換率の選定の自由度を高めることができれば混和材を大量使用する可能性が高まるとし、それぞれの地域で入手可能な混和材の種類と品質を適切に把握したうえで品質規格を整備することが必要との考えを示した。アルカリ骨材反応対策やエトリンガイトの遅延生成による劣化現象であるDEF対策としての活用も示した。また、国によって大きく異なる気象条件に留意する必要があることも指摘。混和材を大量置換したコンクリートは高温の環境条件では著しいスランプロスが懸念されており、日本よりも気温が高い東南アジアではフレッシュ性状が大きく変化することが予想されるため、ワーカビリティの経時変化対策が重要であるとの考えを示した。