1;五輪需要 瞬発力がカギ~首都圏の骨材
五輪需要を前に、他地域から首都圏へ海送されている骨材の需給は長い踊り場にある。首都圏では、昨秋以降需要の地域偏在が色濃くなっているものの、海送骨材全体で見れば出荷量はほぼ横ばい。一昨年に比べ足元の需給は緩んだとはいえ、依然として高い水準を維持している。東京湾岸の骨材商社は五輪需要が本格化すれば骨材需要は回復するとみている。ただ、新国立競技場など短工期が求められる五輪工事で、骨材供給の瞬発力については懸念がある。
関東一区の今年度第1四半期の生コン出荷量は前年同期比2・9%減の538万2千m3で、海送骨材が届かない埼玉を除く1都2県(東京、神奈川、千葉)ではほぼ横ばいの441万8千m3だった。船舶の逼迫懸念が生じた2013年度(472万2千m3)との差は約30万m3しかない。昨年から今年にかけて東京湾内の船舶業者が新たに2隻を増船したものの、輸送力の上積みはごくわずか。依然として東京湾内を航行する船舶は50隻を割り込んだままだ。また、内陸の骨材業者が現在海送骨材を使用している生コン工場に骨材を供給することも考えられるが、埼玉や神奈川も出荷回復の兆しがある。五輪需要の全体像と、周辺部への波及効果は依然として不透明だ。
五輪工事で特に懸念されているのが瞬発力である。従来からの課題である船舶・ダンプの老朽化、船員・運転手の高齢化問題は大きく改善されていない。こうした中、1日当たりの生コン出荷のピッチが大きくなると、長期的には十分対応できる数量でも一時的に需給が逼迫する恐れがある。
一方で千葉砂、石灰石骨材などの生産業者や船舶・ダンプなどの物流業者からの値上げ要請は強い。12年度から毎年、船舶の老朽化や減船、船員の高齢化、原油・電気料金など生産コスト上昇分の転嫁値上げに取り組み、13~14年度は大きな成果をあげた。ただ、今年度は生コン出荷低迷を背景に生コン会社の態度が硬化し、トーンダウンしている。東京湾岸の骨材商社は「足元の需給環境が緩んでいるうちに、船舶を確保しておかないと五輪需要が本格化した後では難しくなる」と懸念している。