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2015年06月04日号

1;3年間で120件、46万m3~増粘剤系混和剤

増粘剤一液型高性能AE減水剤を使用したコンクリートが本格普及へのターニングポイントを迎えている。土木分野ではNEXCO3社がトンネル覆工コンクリートの品質向上対策として粉体系及び増粘剤系の中流動コンクリートを採用している。ただ、増粘剤一液型高性能AE減水剤を使用した中流動コンクリートは、生コンJIS(A5308)の範囲外となるため、建築工事で採用するには大臣認定が必要となることなどがハードルとなり、広く一般に普及する段階には至っていない。

コンクリート用化学混和剤協会の調べによると、増粘剤一液型高性能AE減水剤の使用実績は、2011~14年度の3年間で120件、コンクリート数量にして約46万m3に上る。その内訳は土木が94%、建築が6%と土木分野での実績が圧倒的に多い。適用用途はトンネル、橋梁工事が多く、合わせると全体の60%を占める。建築では免震基礎工事やコンクリート鋼管充填構造(CFT造)の充填コンクリートに採用されている。

普及に向けたポイントとなるのはやはり建築分野での展開だ。5月29日に開かれた日本学術振興会建設材料76委員会ではその現状と課題が議論された。建築分野では免震基礎やCFT造のほかに、リニューアル工事や耐震壁の増設、軽量コンクリートの高所圧送の閉塞対策などで増粘剤一液型高性能AE減水剤を使用したコンクリートへのニーズが期待できるという。これらのニーズを見据えて、大臣認定の取得に踏み切るケースも出てきている。東急建設と関東宇部コンクリート工業が共同認定を取得したのを皮切りに、全国で10件以上の申請及び申請の検討が進んでいる。

また、建築ではJIS品のベースコンクリートに増粘剤一液タイプの高性能AE減水剤を現場添加して流動化する形で採用するケースもある。大臣認定がなくても中・高流動コンクリートが採用できるほか、運搬時間が長い現場などでメリットがある。ただ、現場でより一層の品質管理を求められるため、専門技術者が必要となるほか、品質管理コストが増えるというマイナス要因もある。

増粘剤一液型高性能AE減水剤は建築でもメリットがある材料と認識されており、いかに早く汎用的に使われる環境を整備するかが普及に向けた課題とされている。