1;市場再建への一歩~大阪の生コン
大阪の生コン業界が新しい秩序の形成に向けて一歩を踏み出した。13日までに26社33工場が大阪広域生コンクリート協同組合(木村貴洋理事長)に新規加入届を提出した。阪神地区生コン協同組合(矢倉完治理事長)、大阪レディーミクストコンクリート協同組合(伊葉功二理事長)の所属組合員の過半が合流を決断したもので、加入が正式に承認されれば大阪広域協組の市場占有率は40%から80%に倍増し、陥没市況からの脱却に向けた体制がおおむね整う。ただ、シェア設定など乗り越えるべきハードルは多い。市場再建の動きを本格的な軌道に乗せられるかどうかむしろこれからが正念場だ。
大阪の生コン市場は、3つの生コン協組と員外社の4勢力による熾烈な受注競争が繰り広げられている。市況は、つるべ落としに下がり、陥没圏で推移する。コストアップの価格転嫁もままならず、生コン各社の収益は極度に悪化、経営破綻や撤退、事業譲渡といった淘汰・再編の荒波が襲っている。
こうした事態を重く見た大阪兵庫生コンクリート工業組合(小林俊雄理事長)は一昨年、阪神地区、大阪レディーミクスト両協組が大阪広域協組に団体加入する再編スキームを提案、調整に乗り出した。その流れの中で、危機感が共有され、市場再建への胎動が徐々に強まってきたという。
新規加入届を提出したのは阪神地区協組(20社23工場)所属の18社20工場、大阪レディーミクスト協組(10社14工場)所属の7社10工場、協組未加入の1社2工場。大阪広域協組は加入手続きに着手、定款や規約・規定を各社に郵送した。今後、工場の能力調査を実施したうえで、出資金の払込み、各種契約書面の提出を求める。木村理事長は「定款や法令の遵守を踏まえて加入を承認するかどうか理事会に諮る。合意が得られれば5月20日頃までに加入承認できるだろう」と語る。ほかに加入意思を表明しているところもあり、新規加入はさらに増える可能性もある。
大阪広域協組の事業エリアの生コン工場は120。需要規模は560万m3(2013年度推定)で、各勢力の市場占有率は、大阪広域協組が40%m3、阪神地区、大阪レディーミクスト両協組が各21%(各120万m3)、協組未加入が18%(100万m3)。26社33工場が大阪広域協組に加入すると、組合員数は84社102工場、市場占有率は80%となる。同協組は市場占有率90%以上を目標に掲げており、加入促進に引き続き努める。
喫緊の課題は陥没市況の是正だ。建値は昨秋改定した1万5800円(18・18・20)で据え置き、適正価格の収受を図る考えだ。
木村理事長は「当協組の組合員も加入届を出された会社も期待と不安が交錯しているのは否めない。だが、今の厳しい市況ではどの会社もいずれ立ち行かなくなる。品質の維持、安定供給といった社会的使命を果たすためにも業界を建て直す必要がある。まだスタートラインに立ったばかりだが、再建に向けて力強い一歩を踏み出したい」と強調する。
また、大阪兵庫工組の小林理事長は「和して拓くの精神がようやく醸成されてきた。全員で議論し、ベクトルを合わせて新しい道を切り開いてほしい」と期待を示している。