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2014年12月18日号

1;事実上の「期間契約」~東京生コン協組

東京地区生コンクリート協同組合(東京都中央区、吉野友康理事長)は、生コンの契約形態を見直し、事実上の「期間契約」に移行することを決めた。2015年7月1日以降の引合受付分が対象で、初出荷の翌月から24か月経過後、出荷遂行率(契約数量に対する出荷数量の割合)が90%に満たない物件の契約残について、販売価格を見直す「販売価格特約条項」を登録販売店との契約に新たに盛り込む。原材料の断続的な値上がりでコストは膨らむばかり。加えて、工期が長期化する傾向にあり生コンの納入が最長で7年にも及ぶ物件もあるなど現行の「契約ベース」では事業環境の変化に対応できないと判断、負担の緩和を図り安定供給を確保するために、契約形態の見直しに踏み込んだ。

同協組は8日に開いた理事会で契約形態を見直すことを承認した。10日に登録販売店会議を開き、「一定期間経過時の契約残について販売価格を見直す」との特約条項を売買契約やスライド表に盛り込むなどの要点を説明。今後、理事が建設会社を訪れ、理解を求める。

生コン原材料のセメントや骨材の価格は出荷ベースで変動する一方で、生コンの売買はいったん契約すると納入途中でコストがいくら上がろうとも販売価格の変更が認められない契約ベース。10日に開かれた記者会見で吉野理事長は、「契約形態は長年の課題。出荷ベースと契約ベースのギャップに苦しんでいる」と指摘した。

契約形態の変更後、契約時の販売価格の有効期間は、初出荷の翌月から24か月となる。期間到達時に出荷遂行率が90%以上の物件は当初の契約価格を据え置くが、満たない物件については残った契約数量に対し直前の協組販売価格を適用する。

つまり、この間に値上げを行っていた場合は、それが契約残の値決め交渉の指標となる。契約ベースの枠組みを維持しつつ、期間契約の概念を盛り込んだハイブリッド型の契約形態といえそうだ。

同日以降の引合について受付日の翌々月末までに1m3以上の出荷がない場合は自動解約する。また、期間内での追加契約は3回を限度とし、その総量の上限を契約数量の30%と設定。追加契約は当初の契約数量に加算し出荷遂行率を算定する。

11月末時点で540万m3に達する契約残は対象外。コストアップは6月からの1000円値上げや合理化努力で吸収する。

同協組の受注物件は大型工事が多く、納入期間が3~5年に及ぶのはざら。同協組が12年度までの3年間の新規受注物件を調べたところ、特約条項の適用対象となる物件は約1割、数量換算で約4割を占めた。

来年以降、東京五輪施設工事などの発注が本格化する見込みで、契約残はさらに積み上がる可能性もある。吉野理事長は、人手不足などで建設会社が従来よりも長い工期で受注するケースが増える中で、コストはなお膨らむとの見通しを示し、広がる溝を埋めるために、「契約形態の見直しを決めた」と語った。

生コン製造業界では、世界的な資源価格の高騰で諸資材価格が跳ね上がった2008年に期間契約や出荷ベースを取り入れようという動きが強まり、地方を中心に一部の協同組合が実行した。当時、関東一区でも神奈川、湘南両協組が期間契約を取り入れた。ただ、納入途中での価格の見直しは容易でなく、適用実績は限定的。関東一区に限らず大都市圏では契約形態見直しのハードルは高い。

こうした中、東京地区協組が契約形態の見直しを決めたことで、大都市圏においても脱契約ベースを模索する動きが再浮上する可能性がある。「東京協組がやることに意義がある」(隣接協組幹部)。