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2014年09月18日号

1;コスト負担が課題に~暑中コン対策

地球温暖化で夏期の施工環境の高温化が進んでいる。コンクリートの初期の温度が高くなると品質に影響が出る傾向があることから、日平均気温の平年値が25度を超える期間は「暑中コンクリート工事」として適切な対策を講じることが求められるが、気候変動による猛暑期間の増加で暑中コンクリート工事の対象となる期間が延びている。化学混和剤の活用などを中心とした対策技術の開発が進む一方で、対策コストを誰が負担するのかが明確となっていないことが対応を難しくしている。設計者と製造・施工者の間で暑中コンクリートに対する認識に差があり、緊密な連携を取って適切な対応を取れるような状況にないことがその要因となっているようだ。

日本建築学会が13~15日の3日間、神戸大学で開いた全国大会の中で、材料施工委員会が「気候変動下における暑中コンクリート工事の課題と対策」をテーマに研究集会を行った。

その中で、日建設計の鍋澤斤吾氏が暑中コンクリート工事に対する技術者の意識と現場対応の状況に関するアンケート調査の結果を報告した。アンケートでは「暑中期にコールドジョイントや初期乾燥収縮ひび割れが発生しやすいか?」との問いに、施工者の8割超が「暑中期に発生することが多い」と回答しているのに対して、設計者は施工者に比べて「特に他の季節と変わらない」との回答が多く、両者の認識に差があり、コミュニケーション不足などから設計段階で対策費用が盛り込まれない実態があることがわかった。

竹中工務店の岩清水隆氏は現場での暑中コンクリート対策について、日本建築学会近畿支部と大阪広域生コンクリート協同組合が共同で作成した「暑中コンクリート工事における対策マニュアル」の概要を交えて解説した。岩清水氏は、AE減水剤または高性能AE減水剤の遅延形を使用するとともに、指定スランプを21cm以上にすれば品質が確保できるとしたうえで、「地域によってはスランプ18cmと21cmの生コン単価が異なるので施工段階での変更が難しいケースがある」と課題を指摘し、製造者に同一価格での対応を要望した。

大成建設の陣内浩氏は建築分野の暑中コンクリート工事に関する仕様書と指針類の現状を解説する中で、2015年度に改定予定のJASS5の「暑中コンクリート工事」の節の改定の方向性を示した。現行のJASS5では気象庁のデータを基に、過去30年間の日平均気温の平年値を算出して暑中コンクリート工事の適用期間を設定している。陣内氏は「過去10年間のデータを基にして算出した日平均気温の平年値の方が実際の暑中期間の実態に合っているのでそれを参考値として示すことを検討している」とした。また、「暑中コンクリート工事における対策マニュアル」の策定時に多くの実験データが得られていることに触れ、「データを盛り込んで解説を追記することを検討している」とした。