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2014年08月07日号

1;輸出がじわり増加~セメント

セメントの輸出がじわりと増えている。国内需要が伸び悩み、在庫水準が上昇しているためだ。大手輸出メーカーは、国内需要は盛り上がりを欠いた状態が上期いっぱい続くと予想、輸出増へと舵を切り始めている。セメント協会は2014年度の輸出を前年度並みの850万トンを見込んでいるが、内需の伸び悩み傾向が予想より長く続くようだと、900万トン前後にまで上振れる可能性もある。

セメントの輸出は、直近のピークが11年度で1001万トンだった。12年度が963万トン、13年度が850万トンと2年で15%減った。東北での震災復旧復興や大都市圏でのマンションなど民需の活発化で国内需要が増勢に転じたことから、メーカー各社は輸出を抑え、国内に振り向ける措置を取った。構造改革で生産能力を削減したため、国内と輸出の二兎を追えなくなったことが背景にある。

輸出はフル生産を維持するための調整弁と位置付けられており、基本的に生産計画から内需予想分を差し引いた残りが輸出枠となっている。

メーカー各社は今年度の国内需要を前年比30万トン増の4800万トンと予想。それに多少の上振れ期待分を織り込み、輸出計画を組み立てた。だが、4~6月の輸入を除いた国内販売は前年比横ばいの1097万トンと期待に反して盛り上がりを欠いている。建設業界の人手不足による工程遅延や工事の端境期入りでこれまで需要をけん引してきた東北や関東の荷動きが鈍化したためだ。

その一方でメーカー各社は、フル生産を堅持しているため、400万トンを割り込んでいた在庫は3月末に前月比12・7%増の441万トンとなり、4~6月も430万トン前後と比較的高いレベルで推移している。

在庫が一定の水準を超えると、減産など生産にも影響が出てくることから、輸出抑制措置を部分的に緩和している。4~6月の輸出は209万トンと前年同期に比べ9・2%増加した。

増加基調がより鮮明になりそうなのはこれから秋口にかけて。輸出最大手の宇部三菱セメントは10%増の455万トンとする今年度の輸出計画に約15万トン上積みし、470万トン程度まで増やす考えだ。二番手の太平洋セメントも上期輸出を当初計画より10万トンくらい増やすもよう。

下期に入ると、東北や関東などでの荷動きが活発化し、「輸出による調整を再び迫られる」(メーカー輸出担当者)との見方が強い。その一方で内需が下振れる可能性も視野に入れ、輸出もそれに備えておくべきという指摘もある。

主要仕向先であるシンガポールなどアセアンやオーストラリアの需要は好調。品質、デリバリー両面で日本品の信頼は厚く、引合いはなお旺盛だ。また、円安と輸出価格上昇の相乗効果で輸出採算は大きく改善。フルコストをカバーできており、業績押し上げ要因の1つとなっている。