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2014年07月10日号

1;暑中コン 新たな知見を蓄積

コンクリートにとっても過酷な夏がやってきた。暑中期のコンクリートは、スランプロスが大きくなったり、コールドジョイントが発生しやすくなったりするなど体調不良が起きやすい。夏場の気温は全国的に上昇基調が続く中で、日本建築学会や土木学会が規定する荷卸し時のコンクリート温度の上限値「35度以下」を守ることが厳しい場面も出てきている。ただ、気温上昇と連動して品質問題が増えているわけではない。混和剤の性能向上でコンクリートの体調を維持できるようになったためだ。それを裏付ける実験データの集積も進む。

暑中期のコンクリート温度は、外気温に比べて2~3度高くなるとされている。つまり外気温が32~33度になると、35度を超える可能性が出てくる。コンクリートの高強度化に伴うセメント量の増加も温度上昇を促す要因になっている。

「コンクリート温度が35度を超えて、返品されることもある」(関東の生コン工場)。一般的な生コン工場での暑中対策は限定的で、温度のコントロールは至難の業との指摘もある。チラーなどで練混ぜ水を冷却する方法もあるが、設備投資や運転コストが高額なため導入工場は一握りだ。

施工者にとっても35度超に伴う打設工事の中断は頭の痛い問題だ。工程遅延に加え、コンクリートの打重ね時間間隔が長くなることで逆に欠陥が起きやすくなる。ゼネコン技術者は「35度で上限が切られるデメリットは大きい」と指摘する。

暑中環境の悪化を受けて、両学会は基準の表現を修正。事前に対策を講じることを条件に、実質的に35度超での打込みを容認した。

35度超でも品質を維持できることを証明しようという動きも広がる。大阪広域生コン協同組合と日本建築学会近畿支部は昨春、「暑中コンクリート工事における対策マニュアル」を刊行した。7項目の適用条件を満たすことにより上限値を38度まで認める内容だ。

その基盤を支えているのが混和剤。スランプの経時変化を小さくする、凝結を遅らせる性能が大幅にアップし、不具合が防げるようになっている。

全生連関東一区地区本部は2年前に暑中コンクリート検討WGを立ち上げ、35度超でのフレッシュ性状、耐久性を調べる実験を行っている。過去2年の実験ではいずれの試験項目も規定値を満足していることが確認されている。

9月に神戸大学で開かれる建築学会大会では「気候変動下における暑中コンクリート工事の課題と対策」の題でパネルディスカッションが行われる。また、コンクリート工学会近畿支部は土木向けの暑中コンクリート対策を検討する委員会を新設する。暑中対策は古くて新しい問題。改めて脚光を浴びる中で、新たな知見の蓄積が進められている。