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2014年05月29日号

1;安定感増す海上輸送~セメント

セメントの海上輸送が安定感を増している。メーカー各社が新造船を相次いで投入、更新で廃棄する老朽船を同時運航させることで海上輸送能力を増強しているためだ。セメントタンカーの積載量は4月1日時点で前年比6%増と3年連続で増加した。

セメントの国内需要は2011年度から増加局面に入り、昨年度は4770万5千トンと3年で600万トン増えた。メーカー各社が4000万トン時代の到来を見据えて生産、物流、販売各部門のスリム化をおおむね終えた直後に需要が増加に転じたため、12年度以降、海上を中心に輸送力不足が表面化した。

セメント協会のまとめによると、11年4月時点の海上輸送能力はタンカーが123隻、積載量が52万2000トンと、08年4月時点との対比で13隻減、9%減(5万1000トン減)にまで低下していた。

メーカー各社が海上輸送能力の増強へと舵を切り始めたのが12年度で、13年4月時点で124隻、52万8000トンとなった。

新旧船同時運航

昨年度は太平洋セメント、宇部三菱セメント、住友大阪セメント、トクヤマの4社が6隻を就航させ、積載量は3万500トン増加。安定供給を確保するために、新旧船を同時運航させている。  昨年暮れの需要期は、10月に相次いで襲来した台風の影響で海上輸送が停滞。SS在庫を積み増せず需給が逼迫したが、今年は比較的落ち着いた荷繰りになるとの見方が多い。

海上輸送能力の増強で需要の上振れや天候悪化など海上輸送を停滞させる不確定要素をある程度吸収できる余力を備えた。需要期に向けて、SSの在庫積み増しを早めたり、臨時船員の増員や休日・祝日の荷揚げで運航稼働率を高めたりすることにより「4800万トンレベルの需要に対応できる」とメーカー各社は口をそろえる。5000万トン程度まで上振れても対応できるとの見方もある。

今年度は太平洋セメントが大型タンカーを2隻投入するなど5隻(積載量2万3300トン)が就航する予定。一方で、メーカー各社は「需要動向を踏まえて、老朽船の廃棄を考える」としており、これからその見極めも焦点となる。

SSの出荷能力の強化も進められている。設備の健全性の確保とともに、出荷口の増設など瞬発力向上策が講じられている。

残る課題は陸上

業界の共通目標である「安定供給」の基盤が強化される一方で、その反作用として物流コストが膨らみ、収益面への影響がじわじわ表れ始めている。陸上輸送能力も充足しているとはいえない状況だ。バラセメント車と乗務員の確保が懸案になっており、今後、セメント物流の焦点は海上から陸上へと移る。