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2014年03月13日号

1;増強された生コン供給力~大震災から3年

東日本大震災被災地では生コンの需要増に対応して供給力が増強されたが、現在は生コンが供給力を増強した分だけ工事が進む状況ではないことが明らかになっている。大震災前に縮小した建設・建設資材業界全体が、工事発注機関も含めて、急増した建設市場に対応しきれていないのが現実であり、そのため工事の進捗の遅延も生じている。

現場の人手不足

被災地における生コンの需給は、2012年夏頃に宮城県下で砂の産地による供給調整が行われ、生コンの生産にも制限がかかり、また当時は岩手県の宮古地区、福島県の相馬地区で生コンの需要が急増して供給が追いつかない状態となったことから、公共工事発注機関、施工者の側から生コンの供給力増強の必要性が叫ばれた。発注機関を含めた建設資材需給に関する会議などで論議の中心になったのは生コンの供給力の問題だった。現実的にも生コンは需給がタイト化し、先行きの需要増加見通しも発注機関から示されたことを受けて、生コン生産者側はミキサ車や骨材の調達、生コンプラントの増設などで供給力を増強した。

加えて生コン使用からコンクリート二次製品使用への変更、コンクリートプラント船の導入などの手も打たれた。

現在は生コン不足の声はあまり強くはなくなった。いま被災地の生コンの需給は、地域によって差はあるが、早期に需要が急増した宮古地区などは1工場月3500~5000m3の出荷が続いている。コストをかけて供給力を増強した割には、それに見合った需要は出ていない。気仙沼地区なども工事発注機関が当初に想定した需要を下回って推移している。

いまは「生コン不足」に代わって言われるのは「鉄筋工、型枠工ら現場作業員の不足」。あるいはコンクリートポンプ車の確保難も生コン打設のネックとして問題にされている。

復旧復興工事のうち比較的早期に着手された国による防波堤工事なども、目標の15年度完成は不透明な状況になっている。現場によっては基礎捨石の不足などにも直面するが、加えて現場の人手不足の問題で見通し難になっている。東北あるいは全国的にも建設工事が活発化しているという背景があり、早期解決の見通しが立っていない。

復旧復興工事は先送りされていく公算が大きいとの見方が強まっている。生コンは出荷の最盛期の山が低くなれば、最盛期に合わせた供給力を確保するためにかけたコストを回収できないリスクが生じる。被災地の生コンには地域によってはそういう懸念も持たれている。

各様の方法で

生コンの供給力増強のためのプラントの増設は各様の形態によって行われている。国や県の要請、協議のうえで生コン協同組合が主導して設置し、あるいは設置しつつあるケースがある。やはり発注機関からの後押しで地元建設と生コンが有限責任事業組合(LLP)を設立して設置したプラントもある。また生コン工業組合が誘致したという事例もある。さらには国が生コンプラント設置・運営込みで発注するというやり方が三陸沿岸道路トンネル工事では取り入れられている。いずれも復旧復興工事向け出荷のある期間だけ稼動させることが予め明確にされている。

また建設事業者、生コン事業者、そのほかの事業者により設置されているプラントもある。プラントの新設は場合によっては地元産骨材の需給タイト化、あるいは生コン市況の動き、復旧復興工事終了後の生コン市場などにも関わることから、その動向は関心が寄せられるところとなっている。